プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ルーニーが久々に味わう人の愛情。
2戦連発、通算200得点と代表引退。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2017/08/26 09:00
ゴールを決め、スタンドに咆哮する。ルーニーはやはり、闘争心あふれるスタイルをピッチで表現するのが似合う。
ゴール前でのクレバーさは30代になっても衰えない。
一度ボールを外にはたきつつ、ダイアゴナルラン(斜め前方への走り)でボックス内へと入り込んだ動き、クロスを正確かつ強烈に捉えたヘディングとハイクオリティなゴールだった。その試合後には「13年前に時間を巻き戻した」と評されたが、続くシティ戦後には「チームを進化させられる」とまで言われた。
与えられたポジションは、2試合とも3-5-2のセカンドストライカー。移籍当初「ベストポジションがどこかもわからない」との声もあったが、ロナルド・クーマン監督はFWとして起用している。プレーの展開を見ながら、ペナルティエリア手前で一呼吸おく余裕があったからこそ、シティ戦でフリーになって右足で合わせられた。経験に裏付けられたクレバーさは、30代になったからといって衰えるものではない。
しかもシティから奪った先制点は、ダビド・シルバのポスト直撃シュートの約50秒後。ゴールが決まったのを見届けると、まずは両手を広げて走り、続いて罵声を浴びせるシティファンをからかうように両手を耳の横に持っていき、その手を自軍ファンの前で握り拳に変えて闘志むき出しの形相で吠えた。ルーニーの行動にエバートン陣営は頼もしく思ったことだろう。
若手、ベテランのチームメートを刺激する存在に。
そのルーニーに抱き着いて祝福したドミニク・カルバート=ルーウィンと、メイソン・ホルゲートも同感だったに違いない。2年目のクーマンが体制下で若返りも進むエバートンは、20歳の両者を含めて国産の若手5名が先発起用されていた。昨季はトップ6勢とのアウェーゲームで4敗2引分けに終わったこともあり、精神面強化が課題となっている。
ルーニーはシティ戦でのゴールでも周知の通り、敵地でのビッグゲームにも動じない。2戦2アシストのカルバートらは、ピッチで大先輩から学ぶことも多いだろう。またシティ戦でチーム最高の11kmを走破したハードワークも、チームメイトを刺激するはず。3バックの中央を務める35歳のフィル・ジャギエルカは、スライディングタックルにシュートブロックにと、全盛期を彷彿させる守りを見せていた。