プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ルーニーが久々に味わう人の愛情。
2戦連発、通算200得点と代表引退。
posted2017/08/26 09:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
言うなれば「Win-Win-Winシチュエーション」だろうか。関係する双方に利益がある状態を英語で「Win-Win」と表現するが、ウェイン・ルーニーのエバートン復帰は三方にプラス効果がもたらされている。
今秋で32歳になるルーニーを13年ぶりに呼び戻したエバートン。ストークと強豪マンチェスター・シティとの開幕2試合で、ルーニーの計2得点の活躍もあって勝ち点4を獲得した。「心のクラブ」に戻った男の2試合連続ゴール。イングランド国民は、「母国の至宝」とまで呼んだ「エバートンのルーニー」に対し、再び愛着と感謝の気持ちを取り戻すことができた。
期待の裏返しか、人々は最盛期だった頃のルーニーに非常に厳しく接した。代表戦でもスティーブン・ジェラードがクラブの垣根を越えて敬愛された一方で、ルーニーは期待外れに終わると、その叩かれ具合はひどかった。リバプールでキャリア晩年のジェラードがベンチに座ると「先発させるべき」との声が少なくなかったが、昨季のマンチェスター・ユナイテッドで控えにとどまるルーニーには「もう終わった」との声まで聞かれた。
だが、プレミアで「最後のひと花」を選んだ今夏の移籍を機に、国民がルーニーを眺める目は優しくなった。エバートン復帰が「いい話」として歓迎されたことは、内心では「残念な結末」を覚悟しているような不安も窺えた。しかしルーニーがゴールを決めることで、国民は堂々と喜びを表せるようになった。
開幕戦で突き刺した「ドリーム・ゴール」。
ここ数年評価が一段と厳しかったメディアでさえそうだ。
それはルーニーの逆を行くかのようにエバートンからマンUへと移籍し、2試合3得点を挙げているロメル・ルカクと比較してもだ。メディアで「ドリーム・ゴール」と表現されたストーク戦での得点シーンは、解説者のジェイミー・キャラガーが「プレミア開幕節で最高の瞬間」と言うほどだった。
ヘディングシュートが相手GKの上を越えてネットを揺らすと、ルーニーはホームのサポーターで埋まるスタンドの前へと両膝でスライディングし、天を見上げて歓喜の叫び声を挙げた。このゴールセレブレーションを見た者は、キャラガーに限らず誰もが同感だろう。