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バッジョと同じ道を辿り、違う背番号。
ベルナルデスキが10番を選ばない訳。
posted2017/08/12 08:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
シーズンの開幕が近づくにつれ、気になるチームの“10番”が巷の話題になるのは、イタリアでの毎年の常だ。
スクデット6連覇王者ユベントスの10番は、昨夏以来空き番となっている。
“ユーベの10番”といえば、かつて将軍プラティニや天才バッジョ、そして元主将デル・ピエロといった稀代の名手のみに許されてきた栄光の象徴に他ならない。
気温40度を越す猛暑が続くこの夏、フィオレンティーナで背番号10をつけていたMFフェデリコ・ベルナルデスキが、常勝軍団ユーベへやってきた。
イタリア代表でも主力に定着しつつある若武者は自他共に認める10番タイプのプレーヤーで、6月にポーランドで行われたU21欧州選手権での2ゴールを手土産に、ユベントスと5年契約を交わした。
左利きのサイドアタッカーとして、ドリブルスキルもシュート精度も高い。端正な顔立ちも“老貴婦人”のお眼鏡にかなう。
バッジョが辿った道を歩みながら、10番は選ばず。
何より「フィレンツェのファンタジスタが王者ユーベへ」というストーリーは、かつて27年前に天才バッジョが辿った道のりを想起させる興奮に満ちている。
今夏クラブ最多の移籍金4000万ユーロを費やして獲得されたベルナルデスキは、バッジョら偉大な名手たちの系譜に連なる10番の正統後継者として入団したのだ。
ところが、彼は10番を選ばなかった。
なぜか33番という背番号を選んだベルナルデスキは、入団が決まった後しばらく経ってから、地元メディアに理由を明かした。
「バッジョはイタリア史上最高の選手。彼と比べるなんておこがましいよ。それより、僕は信仰を大事にしたい。33番は大事な数字だ」
一見何の意味もなさそうなゾロ目の数字だが、キリスト教世界の人間にとって「33」という数字には、イエス・キリストの没年齢という重要な意味がある。暗黙の了解で、人生の節目や験担ぎの際に使われることが多い。