話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
俊輔の系譜を継ぐマリノスの技巧派。
天野純、「うまいけど」からの脱皮。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/08/05 08:00
バブンスキーら強力な外国籍選手を迎えたマリノス。ただ現在好調のチームで攻撃のタクトを振るうのは、進境著しい天野である。
攻守両面で「使いたい」と思わせる選手になってきた。
試合を見ていると「いい選手だな」と感じる。
頑固で強烈な負けず嫌いだが、整ったルックスと落ち着いた声にギャップがあり、スター性は十分。洗練された優れた技術を持ち、ひとつひとつのパスの意図が明確でムダなプレーが少ない。安全なプレーを好まず攻めのプレーで相手の急所を狙うが、それでいてパスは受け手にとって優しい。フランス人指揮官はトップ下に結果を求める中、「トップ下は点を取らないと評価されない」と欧州ではスタンダードのマインドをしっかり持っている。
攻撃だけではなく、守備でも手を抜くことはない。先頭を切ってボールホルダーにプレッシャーをかけ、ピンチの時は自陣まで必死に戻る。攻守に運動量が豊富で、試合の流れを変えられる。監督に「使いたい」と思わせる選手になってきている。
その姿勢はチームメートにも伝わっているようだ。後方支援するボランチの扇原貴宏も天野の才能を高く評価している。
「純は同じ左利きなんでやりやすいですし、アッと驚くプレーを見せてくれる。セットプレーで精度の高いボールを蹴りますし、キックの質が全般的にめちゃ高い。それでいて攻守に泥臭くプレーするんで今のマリノスの攻撃には欠かせない存在やと思います」
扇原、山中、マルティノスら左利きがアクセントに。
マリノスには天野、扇原に加え、山中、マルティノスと左利きの選手が多く、その彼らが非常に機能している。清水戦では左サイドの2列目にマルティノスが外に張り、同じく右サイドの齋藤学が中に絞るチーム戦術を採っていたので、天野はトップ下でありながら右ワイドに開いてプレーしていた。
後半は齋藤が左にポジションチェンジしたこともあり、扇原がひとつポジションを上げて、扇原-齋藤-天野という三角形を築き、山中が絡むなど多くのチャンスを作り出していた。モンバエルツ監督は左サイドに左利きを置くのを好んでいるが、このユニットにプラスしてサイドバックの山中が織り成す攻撃は流れが美しく、破壊力も抜群だ。天野のゴールも、山中のクロスから生まれている。
今はシンプルなサイド攻撃が目立つが、これからコンビネーションをさらに活かしたり、幅を使うプレーが出てくるだろう。そうなれば攻撃の選択肢が広がり、天野の良さがさらに発揮されるだろう。