話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
俊輔の系譜を継ぐマリノスの技巧派。
天野純、「うまいけど」からの脱皮。
posted2017/08/05 08:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
それは実に、鮮やかなゴールだった。
7月29日の清水エスパルス戦、前半42分のことである。山中亮輔が高速クロスを上げると、タイミングよくボックス内に入ってきた天野純が左足でうまく合わせて決めたのだ。
「敬真(富樫)が相手DFを引き付けてくれたので、僕のところが空くかなって思って。でも、まさかあんなに速いボールが来るとは思わなかった。ちょっと後ろ気味だったんですが枠に入れようと体が勝手に動いたという感じです」
ゴールを決めた後、エンブレムにキスをして、2度叩いた。
今シーズン2点目のゴールは天野にとって特別な意味があったのだという。
「マリノスはずっと僕を育ててくれたクラブなので、この日産スタジアムでゴールを決めるのが夢だった。それが達成できたので感謝の意味を込めてエンブレムを叩きました」
天野は嬉しそうにそう語った。
ボランチからトップ下に移り、本領を発揮しつつある。
2014年、天野は順天堂大学から横浜F・マリノスに入団したが、ジュニアユース、ユースとマリノスでプレーしてきており、日産スタジアムはまさに“聖地”だったのだ。
天野にとって生涯記憶に残るゴールとなったが、本来であればもっと早く決められたゴールでもあった。昨季は第2ステージからトップ下や攻撃的MFとしてプレー。しかし、なかなか決定的な仕事に絡めず、ゴールも決められなかった。後半はケガ人が増えたチーム状況もあり、不慣れなボランチに入ってプレーするようになった。最終的にはリーグ戦11試合出場、ゴール、アシストともに0。攻撃的な選手としては物足りない成績で終わった。
今シーズンは開幕からボランチとしての出場が続いた。その天野にとってターニングポイントになったのが、13節の清水戦(3-1)だ。トップ下としてプレーし、勝利に貢献。さらに川崎に勝ち、15節のFC東京戦では自ら決勝点となるリーグ戦初ゴールを挙げてチームは3連勝と勢いに乗った。しっかりと結果を出すことでモンバエルツ監督の信頼を得て、トップ下に定着したのである。