濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
新世代の勢いが止まらないRIZIN。
“神童”那須川天心がまたも魅了。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2017/08/04 07:30
豪快なKO劇となった那須川vs.才賀の試合。観ている者をいつもワクワクさせてくれるそのスター性は、本物だ。
RIZINでMMAとキックの両方を盛り上げていきたい。
見た目は“豪快KO”でも、それを導いているのは大人びた戦略だ。
闇雲に打ち合っていたら相手が倒れてくれた、ということではない。試合内容をはっきり記憶しているのは、落ち着いているからにほかならない。
といって、何もかも悟りきっているわけでもないからやはり楽しい。
那須川は今後、RIZINでMMAとキックボクシングの両方を盛り上げていきたいという。いわく「RIZINは両方凄いんだぞっていうふうになれば」。
主催者側は、あくまでRIZINはMMAイベントだとしているのだが、那須川は何度も「RIZINでキックの試合を」とアピールしてきた。今回のコメントからすると、RIZINのあり方自体を、自分と同じ“二刀流”に変えてしまおうとさえ考えているのかもしれない。
デカい野望を持った。でも、それが若者というものだ。そういえば前回の試合後は「将来、教科書に載るような人間になりたい」とも言っていた。「イチロー選手みたいな。凄いじゃないですか」。
今年19歳、学校で「イチローが載った教材」を読んだ世代ということか。考えてみたら誕生日は1998年8月18日だ。『PRIDE.1』、ヒクソン・グレイシーvs.高田延彦の1戦目の時はまだ生まれていない。
“進路”はキックかMMAか、それとも……。
海外メディアからは「キックと同時進行でやっているが、MMAに絞るつもりはあるか」という質問があった。そう願うファンも多いという。「早くUFCのチャンピオンを狙ってくれよ」という意味かもしれない。那須川はこう答えた。これもまたデカい野望だ。
「今やりたいのはキックをメジャーにすること。(その先は)いろんな道がありますけど、考えてるところです。MMAもあるしキックも、ボクシングもある」
今の堀口、矢地と同じ年代になった那須川を想像してみよう。
キックボクシングをMMAと並ぶメジャージャンルにしているかもしれない。その上でUFCのベルトを巻いているかもしれないし、ボクシングの世界戦をしている可能性だってあるということだ。
少なくとも那須川自身は、そのすべてを現実的な将来として捉えている。プロ練習に参加するため定時制(昼間部)の学校に通う高校生だが、進路指導は無用だ。というより普通の大人には無理だ。