フランス・フットボール通信BACK NUMBER
バイエルンを世界の強豪にした男。
塀の向こう側から戻ったウリ会長。
text by
アレクシス・メヌーゲAlexis Menuge
photograph byPhillipe Caron/L'Equipe
posted2017/08/01 08:00
練習中のバイエルンの選手たちが見下ろせる、ウリのオフィスにて。名実ともに、このクラブに君臨している男の姿である。
ドイツメディアが驚愕した、ウリの言葉とは?
これを聴いたおよそ100人の聴衆は、驚愕するとともに本来のヘーネスが戻ってきたと感じたのだった。「私こそは自己告発をしながら刑務所に収監された唯一のドイツ市民である」という言葉に、驚愕はさらに深まった。
彼は自己告発が、逮捕直前の窮余の策であり、法的有効性を持たなかったことを完全に失念している。そしてドイツメディアは、このショッキングな発言をほとんど報道しなかった。シリアスに報じる価値がないと判断したのだった。
それではヘーネスのクラブ復帰は大きな過ちだったのか?
65歳というのは、引退を享受し人生のページをめくるのに適した年齢ではないのか?
有能な部下たちが続々去って、後任も決まらず……。
ヘーネスにとっては、バイエルンなしの自分を考えられなかった。
バイエルンは彼が生涯を賭けたクラブであった。ところがその逆は、次第に真ではなくなりつつある。少しずつではあるが着実に逆風が吹き始めている。圧倒的な支持率で会長に選ばれたものの、2019年の次期選挙では当選はおぼつかないというのが、大方の見方である。
彼がセベナーシュトラーセ(バイエルンの本拠地)に復帰して以来、クラブの雰囲気はギクシャクして、1年前にスポーツディレクターを辞任したマティアス・ザマーの後継者候補たちは軒並みオファーを辞退した。
理由はみな同じで、誰もヘーネスと一緒に働きたくはなかったからだった。
それは最近引退したばかりのフィリップ・ラームや、ボルシア・メンヘングラートバッハのスポーツディレクターであるマックス・エベールも同様であった。