フランス・フットボール通信BACK NUMBER
バイエルンを世界の強豪にした男。
塀の向こう側から戻ったウリ会長。
text by
アレクシス・メヌーゲAlexis Menuge
photograph byPhillipe Caron/L'Equipe
posted2017/08/01 08:00
練習中のバイエルンの選手たちが見下ろせる、ウリのオフィスにて。名実ともに、このクラブに君臨している男の姿である。
スペイン語を話す選手を否定してドイツ語を強制。
ヘーネスにすれば、名門バイエルンのトップに復帰し、権力を再構築するのに時間はかからなかった。
彼が選手に最初に指示したのは、ロッカールームの中の言語をドイツ語のみにすることだった。
スペイン・ポルトガル語圏の選手(ハビ・マルティネス、ベルナト、チアゴ・アルカンタラ、ビダル、ラフィーニャ、シャビ・アロンソ、ダグラス・コスタ。最後のふたりはすでにチームを去ったが)が数多く存在するチームの実態を無視したオーダーだった。
また彼は、テゲルン湖畔にある自宅に、スタッフを定期的に招待している。
最近ではカルロ・アンチェロッティを、ソーセージの晩餐に招いたのだった。ふたりはこの機会を利用して、クラブの抱える状況について話し合った。それから2日後、ヘーネスはメディア取材の際にアンチェロッティをこう揶揄した。
「もちろんカルロには優れた資質がある。どんな状況でも彼は決して落ち着きを失わない。だが落ち着きだけで、スター選手のグループを統率することはできない。ときに彼らの本性を刺激することも必要だ」
まあ、その点はアンチェロッティも認めざるを得ないだろう。
サポーターからの支持も失いつつある現実。
5月20日、バイエルンの27度目のブンデスリーガ優勝を祝い、選手たちが市庁舎のバルコニーで観衆の祝福に応えているとき、突然マイクを握ったヘーネスが、サポーターへの謝辞を述べ始めた。
そこで彼は自分に向けられたブーイングを抑えようとしたのか?
これはひとつの終わりの始まりであるのか?
「彼が会長に復帰して良かったと思っていた」と語るのは、1983年からシーズンチケットを買い続けているサポーターのハンス・バシュトである。