プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「空中戦の巨人」は過去のものに。
広島との本塁打の差は40本以上。
posted2017/07/28 08:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kyodo News
(10+6+0)-(24+25+11)=-44
この計算式が何を表すか?
もちろん野球に関する式だが、すぐさまピンときた人はかなりのデータフリークか巨人オタクと言えるのではないだろうか。
実はこれは巨人選手の本塁打数なのである。
最初のカッコの中の10と6と0は7月26日現在、今季のケーシー・マギー内野手と村田修一内野手、そして今季は外国人枠の問題で出場機会に恵まれずに7月26日に楽天に金銭トレードされたルイス・クルーズ内野手の本塁打数である。そして2番目のかっこの中は昨年のギャレット・ジョーンズ外野手と村田、そしてクルーズの本塁打数だ。
昨年の数字はシーズン終了後のもので、今季は半分ちょっとを消化した時点のものだから、データ的に正確と言えないのは百も承知である。ただ、シーズン終了まで待っても、この数字が飛躍的に変わるかと言えば、そこは懐疑的にならざるを得ない。
それよりも現時点で「マイナス44本」という数字の大きさに驚くとともに、今季の巨人の厳しい戦いが、実はこの数字から透けて見えてくるのである。
昨オフにマギーを獲得した補強自体は、決して間違いだとは思わない。阿部慎之助内野手がフルシーズンで働ける可能性が低いことから、阿部が休んでいるときに戦力ダウンをいかに防ぐかを考えた結論が、マギーを補強して阿部と村田の3人で一塁と三塁のポジションを回していくという戦略だった。
マギーを使うことで、巨人は本塁打を捨てた?
そうして獲得したマギーは、現時点でチームになくてはならない戦力となっている。7月27日時点で打率は3割を越え、打点45も坂本勇人内野手に次いでチームで2番目の数字だ。
ただ、その一方でマギーを使うことで、チームが捨てたのが本塁打なのである。
飛ぶボールの時代だった1990年代から2000年代の巨人は、まさにそんな一発の力で相手をねじ伏せるチームだった。ところがここ数年は主砲・阿部の力が衰え、とって替わる生え抜きのホームランバッターが育っていない。かろうじて村田がその役割を担ってきたが、その村田もかつてのパワーは影を潜めている。となると外国人打者に頼らざるを得ない。
ただ、マギーはそういうタイプの打者ではない。両リーグトップの二塁打33本という数字が示すように典型的な中距離打者である。
その結果が冒頭の計算式となるわけだ。