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辰吉丈一郎の教え子1号が世界戦。
京口紘人「ジョーちゃんのために」
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byMasayuki Sugizono
posted2017/07/23 07:00
ウエアの背中に刻まれた「Joe」。このアルファベット3文字が京口に与える勇気は計り知れない。
初の判定勝ちには「しょうもない試合をした」。
今年2月28日のOPBF東洋太平洋王座決定戦では、フィリピン人アルマンド・デラクルズの脇腹にめり込むような左の一撃を見舞い、3回にKO。強烈な一撃に後楽園ホールの客席はどよめいたが、控え室では「倒すボディーブローではなかったんだけど……」と思わず苦笑い。本人の思いとは裏腹に、ハードパンチャーとして強烈に印象付けた。
2016年4月のプロデビューから3回以内に試合を終わらせ、2、3カ月に1試合のハイペースで6連続KOを達成する。
今年4月25日のプロ7戦目。OPBF東洋太平洋の防衛戦では、初の判定勝ちに不満顔を見せた。陣営は世界戦を見据え、フルラウンドを経験できたこと、セコンドの指示を聞いて冷静に試合を運べたことを評価したが、本人は煮え切らない。「ぎりぎり合格点。しょうもない試合をした」と唇を噛んだ。
作戦を忠実に遂行しても、試合終盤にロープに追い詰めながら、攻めきれなかったことを悔いた。「ボクシングの醍醐味はKO」というスタンスは変わらない。得意とする左アッパーの空振りが目立ったことを反省した。
内山のニックネームにちなんだ「ダイナマイトボーイ」。
世界戦は勝つことが最優先としながらも、ホセ・アルグメド(メキシコ)戦への期待は大きい。同ジムの先輩、前WBA世界スーパーフェザー級王者内山高志の『KOダイナマイト』にちなんで、リングネームは『ダイナマイトボーイ』となった。
KO奪取のためには「左が重要になる」ときっぱり。4度目の防衛を狙うメキシコ人王者を倒すプランは「3パターンくらいある」と自信をのぞかせ、「ジョーちゃんと同じ8戦目にKO勝ちで世界チャンピオンになる」と宣言した。辰吉が指導したボクサーでは「世界王者"第1号"だと思う」と胸を高鳴らせていた。
ボクシングを始めた少年時代から抱き続けてきた大きな夢が目の前に迫っている。
「ジョーちゃんからは世界チャンピオンなりたいじゃ、なられへんぞと言われてきた」