ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
ボクシング三浦隆司、33歳の岐路。
不器用な元王者は完敗に何を思う。
posted2017/07/18 11:25
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Getty Images
“ボンバー・レフト”炸裂せず─―。
15日(日本時間16日)、米カリフォルニア州イングルウッドのフォーラムで行われたWBC世界スーパー・フェザー級タイトルマッチで、元世界王者の三浦隆司(帝拳)はチャンピオンのミゲル・ベルチェルト(メキシコ)に大差の判定負け。1年8カ月ぶりの王座返り咲きはならなかった。
試合の模様を中継したWOWOWの放送局で観戦した帝拳ジムの浜田剛史代表は、ため息交じりに口にした。
「相手があそこまで脚を使うとは思いませんでしたね。三浦はためてパンチを打ちますから。それがすべて悪いほうに出てしまった。終盤に出たボディブローが序盤から出ていれば……」
サウスポーの三浦の武器は“ボンバー・レフト”と称される左の強打だ。ポンポンと軽快に手数が出るわけではないが、力をためて思い切り振り下ろす左の威力は、このクラスでは世界屈指と言えるだろう。前に出て圧力をかけ、得意の打ち合いに持ち込む。それが三浦のやりたいことだった。
極めて高いKO率を誇る相手が、三浦を警戒していた。
ベルチェルトの戦績は試合前の段階で32戦して31勝28KO1敗。三浦の31勝24KO3敗2分と比べても高いKO率を誇り、ゆえにタイミングを見て打撃戦に打って出る、という期待もあった。しかしこれが初防衛戦となるメキシコの王者は、虎の子のベルトを守るべく、三浦の土俵に入るような愚を決して犯さなかったのである。
初回から三浦は苦しんだ。左右に動くベルチェルトに距離をキープされ、“ためて”打つ三浦はほとんどパンチが出せないというスタート。おまけに初回終了間際、軽く合わされた右、左のコンビネーションでダウンを喫してしまった。
ズルズルとポイントを失ってしまった三浦は5回から反撃開始。うなり声をあげてチャンピオンに迫り、8回にはボディブローを効かせてチャンスを作ったが、あともう一発が出ない。逆に王者は三浦が疲労するラウンド終盤に細かくパンチをまとめてポイントをピックアップ。終わってみれば、ジャッジ1人がフルマーク、残りが11ポイント差、5ポイント差という完敗だった。