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則本昂大はなぜ三振を求めるのか。
損得勘定を超えた、投手の本能。
posted2017/07/14 12:15
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Nanae Suzuki
「僕はアマチュア時代は脚光を浴びてこなかったので、人より反骨心は強いと思います。大きな舞台に立ったこともなかったですし、そういう意味ではその場面を楽しめた結果が成績にも出るとは思います」
昨オフ、3年連続でパ・リーグの最多奪三振を獲得している則本昂大に、WBCに向けた意気込みを聞いたときの答えだ。
八幡商高では甲子園出場がかなわず、進学した三重中京大は自身の学年を最後に廃校となってしまう。2013年にプロ入りしてからは、三振を取ることで自らの存在を証明してきた。マウンドへの執着も人一倍強く、「自分が出ない試合は面白くない」と正直に語る。
だからWBCでの不慣れなリリーフ起用も、意気に感じて投げていた。
「いつもと違う役割で、また新しい自分に出会えるかもしれない。ただ、ピッチャーは投げる順番が違うだけで、野手のポジション変更ほどの難しさはないと思う。マウンドに上がってしまえば一緒ですから、そんなに考え込むことはないです」
純粋に強打者との勝負に興じた結果……。
今季、野茂英雄を上回り、連続2桁奪三振の新記録を樹立した則本は、確かに記録の継続に比例して集まる注目を楽しんでいるように見えた。6月1日のジャイアンツ戦で7試合連続とした10個目の三振は坂本勇人から、6月8日のベイスターズ戦での8試合連続は筒香嘉智から奪っている。純粋に強打者との勝負に興じた結果、メジャーのペドロ・マルチネス、クリス・セールに肩を並べるまで記録を伸ばすことができた。
記録が途切れてしまった6月15日のスワローズ戦でも、ドラマチックな見せ場は作った。
1点リードの5回無死一塁でグリーンを打席に迎えると、則本のワンバウンドの投球が捕手・嶋基宏の顎を直撃。走者は三塁へ進み、捕手は足立祐一に交代となった。この窮地に楽天・梨田昌孝監督が、今季初めてマウンドへ。「前進守備にするから、三振を狙ってくれ」。則本は、こうした状況を意気に感じるタイプでもある。グリーンを見事に空振り三振に仕留め、この日6個目の奪三振をマークした。