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畠山健介「100年後も社会で……」
本気で考える日本ラグビーの未来。 

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畠山健介

畠山健介Kensuke Hatakeyama

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photograph byKensuke Hatakeyama

posted2017/07/13 07:00

畠山健介「100年後も社会で……」本気で考える日本ラグビーの未来。<Number Web> photograph by Kensuke Hatakeyama

廣瀬氏とともに写真に収まる畠山。彼らラガーマンこそが、競技の魅力を伝える伝道師の役割を果たす。

プロと社員選手、「稼ぐ」ことへの考え方の違いは。

 プロ選手は自分の得意な分野、ラグビーの現役中に稼ぐだけ稼ぐことになる。それは決して生活水準を上げるために稼ぐのではない。プロラグビー選手を引退した後に自分の好きなこと、興味があること、やりたいことを仕事にするための資金を貯蓄しておく、と考えてもいいだろう。

 一方で社員選手は、定年まで安定した収入で家族を養う。プロ選手、社員選手、ラグビー界はどちらを選択しても、素晴らしい人生が送れる。これはラグビー特有の強みではないだろうか。この強みをもっと発信できれば、子供にラグビーをさせたいと思う親御さんも増えるかもしれない。

 NFLのアメリカンフットボール選手は引退後、5年以内に70%が自己破産をするそうだ。

「莫大な対価を得るのでビジネスなどで騙されたり、失敗したり、ただ単に派手に使ってしまったり、様々なパターンがあると思います」と教えてくれたのは日本のアメリカンフットボールであるXリーグ、IBMビッグブルーに所属している栗原嵩さんだった。

 栗原さんは続けてこう言う。

「もちろんセカンドキャリアを考えながら現役をしている選手もいますが、そうでない選手が多いみたいです」という。ただ稼ぐだけでなく、何のために稼ぐのかを若いプロ選手には教えなくてはいけない。

ニュージーランドではスポーツが人生を豊かにする。

 サントリーのチームメイトであるコス(小野晃征)も幼少の頃、家族でニュージーランド(NZ)に渡っている。外見はアジア人だが、中身は完全なキウイ(ニュージーランド人)だ。そんな彼はNZのラグビー事情にも詳しい。コスが言うには、NZの5つのスーパーラグビーのチームにはPDM(選手キャリア開発マネジャー)が1人いて、選手の様々な相談に応じてくれる。

 セカンドキャリアの相談にも乗り、実際にセカンドキャリアのために必要な資格の試験日とスーパーラグビーの試合日が重なった場合、試験を執り行う機関に試験日をずらしてもらうよう調整、交渉もしてくれるという。スポーツビジネスの最先端を行くのは、文句なしでアメリカだろう。

 しかし、スポーツが人生を豊かにするための1つのスタイルとして根付いているのは、NZだと僕は思う。アメリカのスポーツビジネス、NZのラグビーの戦術やスキルだけでなく、NZスタイルのスポーツの在り方こそが、これからの日本の価値観、新しい幸せの在り方なのではないだろうか?

【次ページ】 ラグビー選手をサポートする機関の代表として。

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