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F1王者“体当たり”は過失か故意か?
ベッテルとハミルトンに新たな遺恨。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2017/07/01 08:00
ここまでフェアな戦いを繰り広げてきた2人だが、アゼルバイジャンでの事件で一挙に険悪ムードに。
2度目の接触には「認識のある過失」があった?
だが、2度目の接触は接触不可避な過失ではない。ベッテルがハミルトンの横に並びかけ、手を上げてアピールした後に接触。故意とまでは言わないものの、「認識のある過失」もしくは「未必の故意」があったと言ってもいいだろう。
レース後の記者会見でも、そこが焦点となった。「ブレーキテストされた」を繰り返すベッテルに対して、記者たちが「なぜ、あなたは体当たりしたのか?」と尋ねても、ベッテルは「僕は彼の後ろに突っ込んだ……」と直接の回答を避け、問題をはぐらかし続けた。
ハミルトンが問題にしている点も、そこだった。 「僕らはワールドチャンピオンで、世界最高のドライバーだ。あなた(記者)たちが自家用車で道を走っていて、窓から手を振り上げて右に寄るってことはあるかもしれないけれど、僕らは絶対にそうはならない。それだけはきっぱりと言い切れる」
つまり、ハミルトンはベッテルの体当たりは故意であり、それが報復であれば、絶対に許されないと主張しているのだ。
W杯のジダン頭突き事件に例えるメディアも。
あるイタリア人が今回の事件を、2006年のサッカーW杯ドイツ大会決勝で起きたジダン頭突き事件に喩えた。そのとき、ジダンは一発退場処分を受けていた。
ジャッジを下すのは審判であり、それがスポーツの基本だ。それはF1に限らず、いかなるスポーツでも疑いえない原則である。
FIA(国際自動車連盟)は後日、さらなる調査を開始すると発表した。