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F1王者“体当たり”は過失か故意か?
ベッテルとハミルトンに新たな遺恨。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2017/07/01 08:00
ここまでフェアな戦いを繰り広げてきた2人だが、アゼルバイジャンでの事件で一挙に険悪ムードに。
先頭を走っていたハミルトンに非はなかった。
F1では、セーフティーカーラン中は先頭を走るマシンはセーフティーカーのペースに合わせて、セーフティーカーから10台以内の距離で走行しなければならない。
だが、セーフティーカーがその周でピットロードへ向かうという合図として、点滅させていた警告灯のランプを消した後は、セーフティーカーランのペースは集団の先頭に立っている者が決められる。ただし、事故を避けるため以下のような但し書きがある。
「一貫性を欠く加速あるいはブレーキングのない、またほかのドライバーを危険にさらす、あるいは再スタートの妨げとなるような、その他いっさいの行為のない一定ペースで進まなければならない」(競技規則39条13項一部抜粋)
これは、再スタートと見せかけて加速した後に減速すると、後続のマシンが追突する危険があるためだ。
では、ハミルトンはどうだったのか。メルセデスのトト・ウォルフ(エグゼクティブディレクター/ビジネス)はこう説明する。 「データを見るとブレーキテストはまったくしていない。あの地点でルイスはアクセルを緩めただけ。そこにセバスチャンが追突してきた。つまり、ルイスにはなんの非もない」
ベッテルは“なぜ自分だけペナルティ?”と納得せず。
だが、ベッテルは納得がいかない。
「自分がペナルティを受けて、ルイスが受けなかった理由がわからない。ペナルティを科すなら両方のドライバーに科すべきだと思っている」
しかし、レース審議委員会がベッテルに科したペナルティは最初の接触に関してではなく、2度目の接触に対してである。そして、この2つの接触は、まったく異なるものだ。
最初の接触は、状況がどうであれ、どちらかのドライバー、または双方の過失によって発生したものだ。ただ、レースではミスは付きもの。例えば、このレースではスタート直後にバルテリ・ボッタス(メルセデス)とキミ・ライコネン(フェラーリ)が接触事故を起こしているが、レース審議委員会は不問に付した。
なぜなら、それは接触が不可避な過失だったと判断したからだ。ハミルトンとベッテルの1回目の接触に対しても、同様だった。