辻直人のB.LEAGUER DIARYBACK NUMBER
辻直人、Bリーグファイナルを今語る。
「引退しなきゃいけないってこと?」
text by
辻直人Naoto Tsuji
photograph byKiichi Matsumoto
posted2017/06/19 11:40
決勝戦は最後の最後まで勝者がわからない劇的な試合だった。勝ったのは栃木だが、川崎が相手だったからこそ実現したのだ。
1年目の“やりきった”と、今回の情けなさ。
シーズンを通しての自分の評価という面では、思い切ったプレーをあまり出せていなかったかもしれない。怪我の影響もあり、なかなかコンディションが戻らなかったのは事実だ。そんな状態でファイナルという舞台に挑んでしまったことが悔やまれる。また、チームがレベルアップしている中で、自分だけが少し“傍観者”になってしまっていた部分もあったと反省している。
Bリーグ初年度のファイナルを経験して思い出すのは青山学院大学を卒業し、チームに加入し戦った'12-'13シーズンだ。そのシーズン、川崎(当時東芝ブレイブサンダース)はレギュラーシーズンで3位となりプレーオフに進出した。ファイナルではアイシンシーホース(現シーホース三河)に目の前で優勝を決められ、タイトルを逃した苦い経験がある。まさに今回と同じようなシチュエーションだ。
ただ、唯一違ったのはあの時はガムシャラにプレーしていたこと。加入1年目で、まだ新人だったということもあるだろうけど、自分でも「悔いがない」と感じるくらい全力を出し、試合後は“やりきった”と完全燃焼した記憶がある。でも、今回は残念ながら100%力を出し切れていなかった。
「もっとやれたんちゃうかな」
「もっと攻めたらよかった」
ファイナルの試合直後に心を占めたのは、悔しさよりも情けない思いばかりだった。
引退さえ、頭をよぎった。
普通、こういった場面では悔しさを感じるものだ。過去、試合に負けた後はほぼ悔しさしか感じていない。でも、不思議とこの時だけは“悔しい”という思いが込み上げてこなかった。
「そういう気持ちを感じないということは、引退しなきゃいけないってこと?」
そんな考えさえも頭をよぎったくらいだ。悔しさがこみあげてきたのは、敗戦から2日経ってようやく、という感じだった。