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全米制覇で松山英樹は脱出なるか?
ゴルフ界に数多い無冠の実力者たち。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2017/06/14 17:00
マスターズで堅い握手を交わす松山(左)とファウラー。この2人が全米オープンでトップを争う展開となるか。
“マツヤマ・キラー”の異名/ジャスティン・トーマス
米ツアーのスケジュールは毎年秋にスタートする。その今季序盤戦の話題は、若い2人が独占していた。ひとりは昨秋から中国、バハマ(ツアー非公式試合)、今年2月のアリゾナで優勝した松山。もうひとりがトーマスで、昨秋にマレーシア、年明けにハワイで2連勝を飾った。
トーマスの3勝のうち2試合で松山が2位にいたため、「マツヤマ・キラー」と、日本のファンには不愉快な異名がついた。ハワイでの2連勝で230万ドルを獲得し、すぐにレンジローバーをポーンと買ったらしい。
トーマスはメジャー2勝、ジョーダン・スピースと同じ1993年生まれ。その魅力は爆発的なスコアメークを可能にするショット力で、ソニーオープンinハワイでは初日に59をマークした。
細身の体躯をムチのようにしならせて、超高速で回転するドライバーのスイングは、ぜひ映像でご覧いただきたい。ただ一般人がゴルフ場で真似をすると、体がどうにかなってしまいそうなので、それはご遠慮いただきたいが。コマは回転が高速であればあるほど、軸が安定する。そんな物理現象に思わずうなずいてしまう。
忘れちゃいけない不惑間近のベテラン/ポール・ケーシー&マット・クーチャー
ここまで若い選手が比較的多く並んでしまった。
確かに、直近10年のメジャー初優勝者の平均年齢は30.6歳ではある。しかし、直近4大会に限ればジョンソン(31歳)、ステンソン(40歳)、ウォーカー(37歳)、ガルシア(37歳/いずれも優勝当時)と、ミドルエイジが待望の瞬間を迎えており、それぞれの苦労の分だけ、人の胸に響くストーリーがあった。
世界ランキング14位、イングランドのポール・ケーシーは39歳。昨秋のプレーオフシリーズから好調をキープする。米ツアーでは1勝(欧州13勝)だが、アリゾナ州立大時代から米国を拠点としてきた。2014年に長男が生まれ、今年はユニセフを通じて世界の恵まれない子供たちへの寄付活動を開始した。
ランキング15位のマット・クーチャーも大会翌週に39歳になる。メジャー未勝利のレギュラーツアー現役選手で、もっとも賞金を稼いでいるのが50歳のスティーブ・ストリッカー(約4295万ドル)。ツアー7勝のクーチャーは、それに次ぐ3961万ドルに上る。
ただ、メジャーのタイトルだけがないのだ。