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全米制覇で松山英樹は脱出なるか?
ゴルフ界に数多い無冠の実力者たち。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2017/06/14 17:00
マスターズで堅い握手を交わす松山(左)とファウラー。この2人が全米オープンでトップを争う展開となるか。
世界ランクトップ10の中で、メジャー未勝利は4人。
過去には2010年の全米オープンから'12年の同大会まで9人連続で初優勝者が誕生した記録があるが、直近の6人は当時よりも、実力派ぞろいの印象だ。そういう意味でも松山は、この流れに乗る“資格”を有している。
ただし忘れてはならないのが、そのカテゴリに属するのが松山だけではないということ。最新の世界ランキングでは、トップ10のうちメジャー優勝経験のない選手が、松山を筆頭に4人存在し、トップ20だと11人にも及ぶ。
今回は松山と似た境遇にいる“ライバルたち”を整理した。観戦のお供となれば幸いだ。
日本の血が流れるタトゥーマニア(?)/リッキー・ファウラー
大会主催者の意図が反映される予選ラウンドの組み合わせで、松山は世界ランク9位のファウラー、後述の同10位のジョン・ラームとの3サムに入った。いずれも若手を代表する選手だが、メジャータイトルがない。全米プロゴルフ協会(USGA)は“そういう意図”を働かせたわけだ。
ファウラーは、米国で最も多くのギャラリーを引き連れる超人気選手(タイガー・ウッズとフィル・ミケルソンは除く)。昨年松山が優勝したフェニックスオープンで、プレーオフを戦った際、USAコールが沸き起こる“完全アウェー”状態になったが、相手がファウラー以外の米国人選手だったら、どうだったか……(ウッズとミケルソンは除くが)。
人気の理由はファッショナブルなスタイルだけでなく、ファンサービスにもある。昨年8月のニューヨークでの試合。単独首位から出て無残な逆転負けを食らった最終日、インタビューを終えてからコースで30分以上、放心状態でファンにサインをしていた姿に驚かされた。
プレー中はファンが歓喜する一方で、本人のガッツポーズは意外と控えめ。感情を内に秘めて戦う姿は、日本人の血が流れているから! と言いたい。ゴルフを始めたのは、おじいちゃんの影響。ファウラーの左腕にはその祖父の名前「田中豊」がタトゥーで彫られている。漢字の楷書体で。昨年のリオ五輪に出場した直後には、五輪マークもそのコレクションに加わった。メジャーを獲ったら、どうなることやら。