松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹との再会を喜ぶ地元高校生。
全米OPで「ヒデキ優勝できるよね?」
posted2017/06/15 11:40
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Sonoko Funakoshi
「また、ヒデキに会えて、本当にうれしい」
そう言いながら笑顔を輝かせたのは、全米オープンの舞台、エリンヒルズを擁するウィスコンシン州内の高校ゴルフ部に所属する17歳、トレイ・グネウィコウくんだ。
開幕前の練習日。松山英樹、谷原秀人、宮里優作の3人が一緒に回っていた練習ラウンドには、彼らのキャディやマネージャー、トレーナー、用具のツアーレップ、そして大勢の日本メディアを含めると、1ホールに総勢30名以上がぞろぞろ歩く大行列になった。
“そこ”は完全なる日本の世界。飛び交う会話はすべて日本語。だが、言葉も何もわからないまま、その中に、ただ1人、身を置いていたのが、3人の選手の名前を記したネームボードを掲げて歩くボードボーイ。それが、高校生ゴルファーのトレイくんだった。
ヒデキのスイングをちゃんと習得するのが目標なんだ。
トレイくんが「また」と言ったわけは、同じウィスコンシン州内のウィッスリングストレイツで開かれた2015年の全米プロの際、彼は初めてボランティアでボードボーイを務め、そのとき付いて歩いたのが松山の組だったからだ。
「目の前で見たヒデキのスイングに圧倒されて、あれ以来、僕はヒデキの大ファン。ゴルフ部にもヒデキのファンが多いし、スイングの真似で一番人気があるのはヒデキ。でも僕は単なる物真似ではなく、ヒデキのスイングをちゃんと習得するのが目標です」
全米オープンがエリンヒルズで開かれることを知った1年半前から、ボランティアでボードボーイをやりたいと志願。「可能ならヒデキ・マツヤマに付きたい」と必死にリクエストを出し、その願いは練習日の火曜日に叶った。
だから「また、ヒデキに会えた」。周囲が日本人ばかりで飛び交う日本語が全然わからなくても、彼にとって“そこ”は願いが叶った夢のような場所。松山のようにスイングすることがトレイくんの目標で、今はクラブではなくネームボードを持って全米オープン会場を歩いているが、松山英樹という憧れの存在があれば、それが媒介となって、目標と現実のギャップは、きっと少しずつ小さくなっていくのではないか。そうなってくれたらいいのに――。
そんな想いを巡らせながら、松山らの練習ラウンドを眺めた。