錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭、全仏ベスト8で何を感じた?
回復力と笑顔と王者ナダルの言葉。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2017/06/13 11:40
錦織の課題=フィジカル面、というイメージが定着してしまったが、本人と周囲は着実に成長している実感がある。
全仏開幕直前の大会出場は試合数を増やすため。
以前から「体が強くなっている」という言葉は何度か聞いている。しかしそれは“短い休養期間でリカバリーすることができるようになった”という意味で言っていたもの。試合をしながらでも疲れを取り、元気が戻って来るという新しい感覚、うれしい発見だった。
直前の週にジュネーブ大会に急きょ出場して、試合をこなしてからも臨んだ全仏オープンでもあった。グランドスラムの前の週に公式戦に出場したのは、2011年以来となる。この年は、ウィンブルドンと全米オープンの直前の週に試合に出たが、肝心の本番ではいずれも1回戦で敗れている。
その失敗を経て6年間にわたって直前週の試合に出なかったのは、他の多くの選手と同じく、それがベストの調整方法だという確信があったからだろう。にもかかわらず今回、わざわざ予定になかった大会を最終段階で入れたのは、3月に負った手首のケガの影響でクレーシーズンで満足な結果を残せず、全仏オープン前に「試合数を増やすため」だと説明した。
そんな無理はしないほうがいいのでは、と心配したマスコミ関係者やファンも少なくなかっただろう。
「日本のメディアはケイの体のことを心配しすぎ」
もう2年くらい前になるが、錦織をマネージメントするIMGの内部からこんな声を直接聞いたことがある。
「日本のメディアはケイの体のことを心配しすぎだろう。大会に出すぎじゃないかとか、疲れているんじゃないかとか。そうやって甘やかしていることに気づいてない」
そうなのかもしれない。チームの中にはフィジカル向上を目指してきた時間の蓄積があり、6年前と同じ結果にはならないという自信があったのだ。ケガに関する質問には何を聞かれても「大丈夫です」しか言わなくなった錦織にも、何かメディアに対する頑なな意志のようなものを感じた。とはいえ、あまり大丈夫でないときの「大丈夫です」はすぐにわかってしまうのだが……。