テニスPRESSBACK NUMBER
皇室とテニス「美智子さまとペアを組んで…」「いいフォアーハンドをドンドン打たれる」招待選手たちが明かす“上皇ご夫妻との秘話”
posted2022/02/23 06:00
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
JIJI PRESS
「テニスと皇室」というテーマで何か書けませんか、と編集部から提案されたのは昨年11月のことだった。ちょうど無観客で静かな全日本選手権が開催されている最中だったので、とりあえず“聞き込み”をすることにした。
皇室とテニスの関係といえば、上皇・上皇后両陛下の若かりし頃の軽井沢での<テニスコートの恋>があまりにも有名だが、実はそんなお伽話的なものにとどまらず、皇族とテニス人たちにはもっと直接的なつながりがある。ひと昔前の選手たちが、ときどき御所に招かれて皇族やそのお仲間とプレーをしていたという話は何度も聞いたことがあった。全日本の会場には、往年の国内トップのプレーヤーたちが協会の役員や監督やコーチなどさまざまな立場となってあちらこちらにいた。ひょっとしたら身近でおもしろい経験談が聞けるかもしれない……そんな軽い気持ちだったが、尋ね回ってみて驚いた。その多くから、「ありますよ」という答えが返ってきたからだ。
「美智子様と僕のペアが勝ったのですが…」
全日本選手権V7の記録を持ち、日本テニス協会の専務理事とJOCの専務理事を歴任した福井烈さんは、「デ杯(デビスカップ)のメンバーだったときに、監督だった坂井利郎さんに呼ばれて御所に伺いました。ただ、そのときは運悪く雨が降ってプレーはできず、紅茶とクッキーを出していただき、少しお話をしたと思います」と20代の頃の緊張のティータイムを振り返った。
すると、「僕のときはサンドイッチでした」と若干の優越感を滲ませたのは、現在ユニバーシアード・チームの総監督などを務める右近憲三さんだ。
インカレの単複優勝など学生時代にも活躍した右近さんは、その物腰の柔らかさも手伝って、テニス会場に皇族の方が観戦に来られたときは“案内役”を任されているイメージも強い。20年以上前、上皇ご夫妻が天皇・皇后だった頃にミックスダブルスをプレーした経験があるという。上皇様のパートナーは杉山愛さんだった。
「美智子様と僕のペアが勝ったのですが、ほっとしましたね。でもあちらは陛下ですから、このまま勝っていいものなのかどうかと複雑な気持ちでもありました」
日本を代表する選手が招待されていた
また、現在フェドカップの監督で80年代にインカレ4連覇という輝かしい実績を残した土橋登志久さんは、学生最強という肩書きを買われたのか、その頃にお呼びがかかったそうだ。