錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭、全仏ベスト8で何を感じた?
回復力と笑顔と王者ナダルの言葉。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2017/06/13 11:40
錦織の課題=フィジカル面、というイメージが定着してしまったが、本人と周囲は着実に成長している実感がある。
10度目の全仏制覇を成し遂げたナダルの興味深い言葉。
さて、錦織がローランギャロスを去った4日後、錦織を破ったマレーはスタン・ワウリンカとの激戦の末に敗れた。そのワウリンカ相手に圧勝したのはラファエル・ナダルで、全仏オープンV10を達成した。ナダルの優勝会見でのこんな言葉が印象に残っている。
「10回目のローランギャロス優勝、これは最高にうれしいし、特別なことだ。でも僕はグランドスラムのことだけを考えているわけじゃないし、テニスはグランドスラムだけで語られるべきじゃない。グランドスラムが全てなら、ツアー選手は皆やりきれないだろう。過去10年の間に何人のグランドスラム・チャンピオンが生まれたにせよ、その一方で、グランドスラム・タイトルがなくてもすばらしいキャリアを持つ選手が何人もいる」
これ以上ないほどヒーローらしく頂を制したチャンピオンが、誰の顔を思い浮かべていたかは、聞いた人それぞれが想像すればいい。真の王者の、ライバルたちへの敬意の深さには感服する。「グランドスラムが全てじゃない」は慰めではなく、あと数歩に迫る、夢へのエールのように聞こえた。