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田臥「負けた時に、チームみんなが」
Bリーグ初代王者、栃木の1年間。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKyodo News
posted2017/06/03 09:00
バスケットボールは肉弾戦であり、精神の戦いでもある。最後の瞬間まで繰り広げられたファイトは、そのことを強く物語っていた。
最後に川崎の選手から脚力を奪った栃木。
そんなシーソーゲームの決着は、第4Qにもつれこんだ。それまでリバウンド数は拮抗していたのだが、第4Qだけに限れば実に倍の差がついた。
栃木は16本。そのなかで、シュートを外しても攻撃が続くオフェンスリバウンドが7本。
川崎はトータルで8本、オフェンスリバウンドは3本だ。
栃木の粘り強い戦いは、最後に川崎の選手たちの脚力を奪った。そして、粘り強くオフェンスリバウンドを取り続けることで、高度に組織された川崎の守備は崩れていった。
そして、注目すべきはもうひとつ。栃木のエースが不在の時間帯だ。
川崎が誇るBリーグ得点王ニック・ファジーカスのマークについていた栃木のライアン・ロシターは、残り6分33秒の時点で4つ目のファールをとられてしまう。あとひとつで退場だ。一度、ベンチに下がらざるを得なかった。
代わりに呼ばれたのは、トミー・ブレントン。昨季のNBLのアシスト王ながら、今シーズンは外国籍選手に関するルールが変わった影響などもあり、レギュラーシーズンでは大きく出場時間を減らし、この試合でも試合終盤のこの場面で初めてプレーすることになった。
この時点で、スコアは69-68と川崎がリードしていた。川崎にすれば、ブレックスの得点王であるロシターがいない時間帯というのは、相手を突き放すチャンスになるはずだった。
5人全員が絡んだ、田臥にとってのベストプレー。
しかし、そうはならなかった。
ブレントン出場からおよそ1分後。竹内のパスを受けた古川孝敏の3Pシュートが外れる。しかしギブスがダイブして、ブレントンがオフェンスリバウンドをつかみとり、田臥勇太へ。その田臥からのパスに反応して、ギブスがアリウープを決め、71-72で栃木が逆転した。
コートに立っていた5人の選手全員が絡んだプレーだった。そして何より、ブレントンがコートに立つ機会を著しく減らしながらも、腐ることなくチャンスが与えられたときに備えて準備をしていたからこそ生まれたゴールだった。ちなみに田臥は、この一連のプレーをファイナルの後に生出演したTV番組でベストシーンに挙げている。