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田臥「負けた時に、チームみんなが」
Bリーグ初代王者、栃木の1年間。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKyodo News
posted2017/06/03 09:00
バスケットボールは肉弾戦であり、精神の戦いでもある。最後の瞬間まで繰り広げられたファイトは、そのことを強く物語っていた。
昨年は致命傷になったロシター不在を、今季は……。
栃木の指揮官トーマス・ウィスマンは試合後にこう語っている。
「昨シーズン、もしもロシター選手の怪我がなければ、チャンピオンになれたんじゃないかというような思いもありました。しかし、竹内とギブスの2人が入ったことによって、サイズでも才能面でも、シーズンの初日から大きく成長できたという気持ちでいます。2人を加えながらチームとして上手く戦えました。
そして、竹内とギブスは他のチームでも優勝経験があるので、そうした経験もチームにプラスになったんじゃないかと思います」
これはどういうことだろうか。
昨季のNBLプレーオフで、栃木は川崎に敗れた。その2戦目で、ロシターは負傷で退場している。ロシターを欠いたチームは2戦目と3戦目を落としてしまったのだ。
そして今年のファイナル、ロシターを欠いていた2分半あまりの時間帯で、栃木は昨季の課題を克服した様を見せつけた。
最後の最後まで、点差があっても緩めない。
さらに付け加えるならば、あのアリウープ。ひとつのゴールに過ぎないが、試合に与えた影響は大きかった。そもそも、アリウープというのは相手の守備の組織を崩してこそ、生まれるものである。
そして、このダメージは予想以上に川崎の選手たちに影響を与えていた。
残り1分26秒の時点で、川崎もアリウープを狙った。この時点でスコアは79-80と栃木がわずか1点のリード。ライアン・スパングラーがフリーとなりゴール方向へとび、そこへ篠山竜青からのパスが出た。完全にフリーで放ったシュートはしかし、リングを回って下に落ちた。
残り1分を切ったタイミングでも、川崎は再び、篠山からスパングラーのアリウープにトライしたのだが、ミスパスとなり、ラインを割ってしまった。
そのあとに両チーム最多得点をマークしたギブスのゴールと遠藤祐亮のフリースローにより、残り30秒を切った時点で79-85と栃木がリードを6点に広げた。
そして、そこから先はゴールが生まれないなか、栃木の選手たちは実に“らしい”パフォーマンスを続けていた。
リバウンドをつかもうとした田臥が観客席に突っ込んでいった。その後にはサイドライン際でルーズボールにギブスが飛び込んだ。ギブスは結果的に、このプレーで左足のアキレス腱を断裂するほどの大怪我を追ってしまう。
6点差をつけながらも、ひとつのボールに命をかける。そんな栃木の選手たちの奮闘は王者となるのにふさわしいものだった。