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田臥「負けた時に、チームみんなが」
Bリーグ初代王者、栃木の1年間。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byKyodo News

posted2017/06/03 09:00

田臥「負けた時に、チームみんなが」Bリーグ初代王者、栃木の1年間。<Number Web> photograph by Kyodo News

バスケットボールは肉弾戦であり、精神の戦いでもある。最後の瞬間まで繰り広げられたファイトは、そのことを強く物語っていた。

攻撃の質でも爆発力でもなく栃木の武器は……。

 試合後、ロシターは胸を張った。

「シーズンの初日に、『素晴らしいチームというのは、個人がどうかは関係なく、チームとして戦えるのだ』という言葉をヘッドコーチが教えてくれました。このチームを表現していると思いましたし、それが今日の試合に勝てた要因だったと思います」

 攻撃の質を考えれば、川崎ブレイブサンダースの方が上かもしれない。攻撃の爆発力を考えれば、千葉ジェッツに及ばないかもしれない。

 でも、彼らは攻撃の回数を増やし、相手の攻撃の質を下げ、その回数を減らすことに全てを注いだ。そして、全員が同じ方向を向いていた。そこに優勝の鍵はあった。

 栃木ブレックスの社長であり、GMを兼務する鎌田眞吾は、こう話す。

「田臥という選手がいるなか、チームワークというのは非常に重んじています。自分のためというよりは、チームが勝つためというマインドを持っているような選手たちがブレックスにはいます。そして、うちがそういうチームだという話をさせてもらい、そこにしっかり賛同した選手が集まってくれていると思っています」

 バスケットボールの能力だけではなく、人間性も優れた選手たちが栃木に集まってきた。その言葉に偽りはないだろう。

ブレックス、という名前に込められた2つの意味。

 でも、彼らはどうして同じ方向に顔を揃えることができたのだろうか。

 観た者からも、プレーした者からも熱気が漂っていた試合後の記者会見で、キャプテンの田臥はこう話した。

「レギュラーシーズンで勝った試合もあれば、負けた試合もあったからこそ、最後まで信じることが出来たんだと思います。勝った時にはもちろん良かったと思うんですけど、負けたときに、いかに成長していくのかを本当にチームみんながずっと考え続けて、同じ意識をもったからこそ、最後の最後にまとまれたと思います」

 プロとは、勝つことを求められる者たちだ。

 だから、負けたときにこそ、プロとしての資質は問われる。

 栃木の選手たちはプロリーグが始まる前から、敗戦から学ぼうとする姿勢を持ち、成長を続けてきた。

 プロバスケットボールリーグとして華々しくスタートしたBリーグのファイナルに選ばれたのは、プロとしての意識と誇りをもった集団だったのだ。

 チーム名のBREXには、2つの意味がこめられているという。

 1つ目がBREAK THROUGH、現状を打破する、という意味。

 2つ目がBasketballのREX。REXとはラテン語で「王者」を意味する。

 国内のトップリーグが2つある状況を打破したBリーグというバスケットボールリーグの王者に彼らが輝く。優れた小説家でも考えつかないような、美しいストーリーを描いて見せたのが栃木ブレックスだった。

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