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パウエル直伝のスタート&肉体改造。
“関西発”100m走の新星・多田修平。
text by
別府響(Number編集部)Hibiki Beppu
photograph byAFLO SPORT
posted2017/05/29 07:30
多田(写真右端)は、ガトリン、ケンブリッジらと比べると、ひときわ細い身体に見えるが……。
アサファ・パウエル直伝のスタート&肉体改造。
「今シーズンは追い風参考と向かい風でしか走っていないんで、あわよくば10秒1切り、0台とかも出していきたいと思っています。関西インカレもケガ明けでのタイムで、万全じゃない状態の記録だったので。10秒1台は確実に見えたなと思いました」
もともと山縣亮太(セイコー)のスタートを分析するなど勉強熱心な多田だが、今季の急成長の理由は今冬のアメリカ遠征にあったという。
「2月、3月の間に大阪陸協が主催する『OSAKA夢プログラム』という事業にサポートしてもらって、3週間アメリカ遠征にいかせてもらったんです。そこでアサファ・パウエル選手(ジャマイカ)とずっと一緒に練習させてもらいました。スタートや肉体改造の筋力トレーニングなどを教えてもらったのが、いまの結果として出ているんじゃないかと思います」
100mで9秒72の記録を持つ元世界記録保持者からは、スタートの姿勢や、体幹強化の重要性を学んだという。
「去年まではスタートがつまずき気味で、お尻が曲がっている状態だったんですが、今年はスタートから姿勢を前目にして、あらかじめ腰が前に入るような形をイメージしています」
現在の学生陸上界は、ほぼ関東中心なのだが……。
多田は大阪桐蔭高校時代から、関西では名の知られた存在だった。高校総体でも、3年時には6位に入賞している。大学入学後も着実に記録を伸ばし、昨年の日本インカレでは10秒30で3位に食い込んでいる。
それでもあまり注目を集めなかった理由は、多田が関西圏の大学である関学大に在学していることもひとつの原因だろう。
現在の日本の学生陸上界は、どうしても関東中心になっている。桐生祥秀(東洋大)も、ケンブリッジも山縣も、現在100mの一線級で戦っている選手は、ほとんどが関東の大学出身者だ。
だからこそ、多田には「関西から世界へ」という想いが強くある。
「今回のゴールデングランプリに出場できたのは伊東浩司さんの縁です。伊東さんが関西インカレの時とか話しかけてくださって、注目してくれているのがわかりました。朝原(宣治)さんもコーチ伝いに聞いただけですけど、気にして下さっているようで、関西出身で活躍されていたお2人が期待してくれているぶん、関西から世界へ羽ばたけるような選手になっていきたいです」