スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
1年目のCL制覇より今季のリーガ優勝。
ジダン監督の評価が急騰する理由。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2017/05/27 11:30
実は意外なことに、ジダンが現役時代にリーガで優勝したのは1度だけ。監督として、その数字を越えるのは時間の問題にも見える。
ロナウドもジダンの起用法を手放しで賞賛。
アンタッチャブルな存在だったクリスティアーノにまでローテーション起用を納得させたのも、ジダンの功績だ。
シーズン終盤はリーガの数試合でベンチからも外してビッグゲームに集中させたことにより、パフォーマンスの低下が囁かれていた32歳はラスト9試合で9ゴールを荒稼ぎし、華麗なる復活を遂げてみせた。
「もちろんもっとプレーしたいけど、賢い決断だった。ジダンやトレーナーたちと話し合い、プレー時間をコントロールすることにした。過去数年と比べて7、8試合多く休んできた効果を実感しているよ。タイトルを勝ち取るのはシーズン終盤の試合になると分かっていたから、そこに向けて準備してきたんだ」
マラガ戦でも開始2分のファーストチャンスをものにした好調のエースは、自身を含めたジダンのチームマネージメントを手放しに賞賛している。
「ジダンは選手全員がチームに関わる賢いチームマネージメントを行った。誰もがピッチに立つたびに良いプレーをした。それはジダンの功績だ」
CLをとっても手腕を疑問視されていたジダンだが……。
就任1年目でウンデシマ(CL11冠目)を手にした後も、まだジダンの手腕を疑問視する目は少なからずあった。昨季のCLは対戦相手に恵まれた印象が強かったし、PK戦に持ち込まれた決勝も含め、首を傾げたくなる采配もいくつか目についた。
だが今季はバックアッパーに恵まれたこともあり、昨季の4-3-3と4-4-2に加えて4-2-3-1、4-3-1-2といったバリエーションを増やしながら、試合状況に応じて勝ち切る采配、逃げ切る采配を使い分けるようになってきている。
名将の風格を漂わせはじめた指揮官に導かれ、マドリーは個々のコンディション、プレー内容共にベストの状態でシーズンの大詰めを迎えた。
今季は残り1試合。古巣ユベントスと対戦する6月3日、史上初のCL連覇と59年ぶりのドブレッテを実現すれば、名将ジダンの評価は揺るぎなきものとなるはずだ。