スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
1年目のCL制覇より今季のリーガ優勝。
ジダン監督の評価が急騰する理由。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2017/05/27 11:30
実は意外なことに、ジダンが現役時代にリーガで優勝したのは1度だけ。監督として、その数字を越えるのは時間の問題にも見える。
“干された”はずのハメスさえ1000分以上出場。
クリスティアーノ・ロナウドとベンゼマの得点数が低下し、ベイルはケガ続きでほとんど貢献できなかったシーズンにおいて、勝ち点93を積み重ねることができた最大の要因。それはジダンの言葉にもあった通り、充実のベンチメンバーを活用した総力戦で1年を乗り切ったことにある。
「プレー機会の多かった選手も少なかった選手も、みながチームとして戦った。鍵は選手全員がモチベーションを失わなかったことだ」
そう話したのは、ベイルの離脱中に目覚ましい活躍を見せ、自身がトップ下に位置する4-3-1-2の新システムを確立するに至ったイスコだ。
ナチョは最終ラインの4ポジション、コバチッチは中盤の3ポジションをこなす便利屋として主力組の穴埋めをまっとうした。チーム最多の公式戦50試合に出場したのはクリスティアーノでもクロースでもなく、バックアッパーの代表格ルーカス・バスケスだった。
21歳のアセンシオは限られた出場機会に底知れぬポテンシャルを発揮し、切り札的な存在となった。モラタは先発14試合、1331分の出場時間にとどまりながら、ベンゼマの11ゴールを上回る15ゴールを獲得。“干された”印象の強いハメスですら、1180分のプレー時間で8ゴール6アシストを記録している。
2戦連続で同じ11人が先発したのは最終戦だけ。
ジダンはプレー機会に飢えている彼らのモチベーションとフラストレーションのバランスを保ちながら、綿密に主力組と控え組のプレー時間をコントロールしてきた。
その結果、カシージャ、ヤネス、コエントラン、マリアーノの4人を除く20選手がリーガだけで1000分以上の出場時間を刻んだ一方、2500分を上回ったのはクリスティアーノ(2544分)ただ1人のみにとどまった。
そうやって最大で9選手を入れ替えながら59試合の公式戦を戦ってきた今季は、最終節マラガ戦を除いて、2戦連続で同じ11人を先発させたことが一度もなかった。