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ジョコビッチの深刻な不調はなぜか。
尋常でない男の、ありきたりな理由。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byAFLO
posted2017/05/23 07:00
フェデラー、ナダルのグランドスラム優勝回数を簡単に抜いていくかと思われたジョコビッチがまさかの失速。さて、復活は?
全部のピースが揃わなければ、BIG4といえど。
それでも、あのジョコビッチに勝てるかもしれないと思っただけで、われわれの心はざわついた。銘酒に酔うように、試合を見ながら夢と現実のあわいを楽しんだ。錦織が挑んでいるのが世界を見下ろす高峰であるだけに、その陶酔感は格別だった。
ジョコビッチがそれくらい特別な存在で、現実離れしたところがあっただけに、モチベーション低下という、ありきたりの、ある意味、人間くさい理由での失速が不思議でならない。
ただ、心技体をそろえることはそれほど困難であり、全部のピースが集まらなければBIG4でも勝ち続けることが難しいのが今の男子テニスであるという、一般論の答えなら導き出せる。
ジョコビッチは盟友と離別しての競技生活を「人生の新しい章だと感じる」という。果たして第2章で巻き返しはなるか。
そもそも、今季の男子テニス界全体が、まさかの連続と言える。全豪でのフェデラーの復活に続き、ラファエル・ナダルがクレーコートの3大会を続けて制覇し、復調を高らかに宣言した。一方で、昨年の猛ラッシュのツケが回ったのか、世界ランク1位のアンディ・マリーは不調で低空飛行を続ける。ジョコビッチがもたらす次の「まさか」は、いいほうの驚きであってほしいのだが。