酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
ロッテのチーム打率が衝撃の1割台。
戦後最低をひた走る歴史的な貧打線。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2017/05/09 07:30
不振に陥った主力が1人ならまだ手の打ちようがある。しかし打率1割台以下がスタメンに約半数並ぶこともあるのが、ロッテの現状だ。
ロッテはこのまま“大記録”を更新してしまうのか?
果たしてロッテはこのまま“大記録”を更新してしまうのか? チーム打率1割台のまま終わってしまうのか?
その可能性はほとんどないだろう。
1990年代末、アメリカのセイバーメトリクスの研究者、ボロス・マクラッケンは様々なデータをいじっているうちに、ある法則に気が付いた。それは「本塁打を除くグラウンド内に飛んだ打球が安打になる割合は、投手や野手の能力にかかわりなく、だいたい3割になる」ということだ。つまり、本塁打以外の安打は「実力」ではなく「確率」の産物だというのだ。
「そんなバカなことがあるか!」と多くの研究者が反論を試みたが、いまだにマクラッケンの説は論破されていない。足の速さや打球の速さなどの優劣によって、打率に差はつくが、トータルでは大差がつかないというのだ。
「本塁打を除く打球が安打になる率」を調べると……。
この説、マイケル・ルイスのベストセラーノンフィクション、「マネー・ボール」で紹介されて有名になった。「本塁打を除く打球が安打になる率」をBABIP(Batting Average on Balls In Play )という数値で、打率3割よりも高い場合も低い場合も、そのまま試合を続けていれば、BABIPは3割に近づいてくるというのだ。
試しに2017年のパ6球団の打率とBABIPを並べてみよう。
楽天 打率.274 BABIP .306
ソフトバンク 打率.265 BABIP .302
オリックス 打率.262 BABIP .301
西武 打率.248 BABIP .283
日本ハム 打率.231 BABIP .275
ロッテ 打率.185 BABIP .231
ロッテのBABIPが極端に低いことがわかる。マクラッケンの法則にしたがえば、ロッテの打率はこれから上がっていくと思われる。