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10年前の恩義を福良監督に返す時。
小谷野栄一が乗り越えた引退危機。

posted2017/05/02 08:00

 
10年前の恩義を福良監督に返す時。小谷野栄一が乗り越えた引退危機。<Number Web> photograph by Kyodo News

4月27日の試合ではチームをサヨナラ勝ちに導く内野安打を放った小谷野。勝利のために見せるしぶとい打撃には味がある。

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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 走る、走る、走る。

 4月25日の埼玉西武戦の3回裏、オリックスT-岡田の安打で、チーム最年長36歳の小谷野栄一は必死の形相で足を回転させ、一塁から一気にホームへ帰ってきた。

「大変です。ベンチに酸素用意しといて欲しいよ」と苦笑するが、表情には充実感があふれている。

 北海道日本ハムからオリックスにFA移籍して3年目の今年、小谷野が元気だ。開幕から中軸を任され、リーグ4位の打率.360(4月30日時点)で好調なチームを支えている。ステフェン・ロメロが左膝大腿骨の骨挫傷で離脱してからは四番に座り、“つなぎの四番”として機能している。

 過去2年は左太もも肉離れなど怪我に泣かされて調子も上がらなかったが、昨年9月に左足首関節の遊離骨片除去手術に踏み切った。これが功を奏した。

「足首のとんがった骨が刺さって痛くて、足をうまく地面につけられていなかったから、それが肉離れや膝痛につながっていたんです。手術してからは膝痛も肉離れも出ていないですからね」

 足首の痛みを取り除いたことで体のバランスが整い、打撃でも目指す体の動きができるようになった。

長年の恩人である「福良さんを男にしたい」。

 昨年は4月終了時点で10勝16敗の最下位だったオリックスが、今年は15勝8敗の2位。先発投手陣がきっちりと試合を作り、つながりのいい打線がそつなく得点を重ねる。過去2年とはまったく違う姿を見せている。

 そんな中、小谷野はことあるごとに「福良さんを男にしたい」と口にしてきた。福良淳一監督には、言葉で言い尽くせない恩を感じている。2014年のオフ、移籍先にオリックスを選んだのも、当時ヘッドコーチで、日本ハム時代の恩人である福良監督がいたからだ。

【次ページ】 「何かあったらすぐタイムかけてあげるから」

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