フランス・フットボール通信BACK NUMBER
コンテの遺産を捨て去ったアッレグリ。
ユーベの“マッドマックス革命”とは?
text by
トマ・シモンThomas Simon
photograph byEtienne Garnier/L'equipe
posted2017/04/26 11:30
ナポリのエルセイド・ヒサイを振り切って走るマンジュキッチ。右サイドで新たな活躍を見せ始めている。
バランスを崩すため、クアドラドを右サイドに起用。
クアドラドのクオリティの高さはすでに良く知られている。
そのスピードと突破能力、ドリブルのセンスは、オープンスペースでもクローズドスペースでも強大な威力を発揮する。システムの変更に伴う守備の負担(サイドのスペースのカバー)は、彼に大きなエネルギーの消費を強いた。だがそれでも、攻撃面での効果は明らかだった(4-2-3-1に移行してからは17試合に出場し2ゴール5アシストであるのに対し、それ以前は19試合で1ゴール3アシスト)。
ダニエウ・アウベスと同様にリヒトシュタイナーともオートマティズム――とりわけサイドでの数的優位とコンビネーションにおいて――を確立した彼の右サイドは、しばしば右に流れてプレーしたがるトップ下のディバラとも理想的な補完関係を保っている。
素早い攻守の切り替えからの、縦に長い深みのあるスピーディな攻撃でも相手への脅威になっているのだった。
マンジュキッチという左サイドの切り札。
「彼のクオリティがユベントスを変えたのであってその逆ではない」とアッレグリはいう。
2010年にジョゼ・モウリーニョがサミュエル・エトーをサイドに配して3冠を達成したように、生粋のセンターフォワードであるマリオ・マンジュキッチをサイドに置くアイディアは、別にアッレグリのオリジナルというわけではないし、ユーベで初めて試されたわけでもない。既存のアイディアの再利用であったが、結果的にとてもぴったりと嵌った。
ゴンサロ・イグアインに比べフィジカルもヘディングも強くはないマンジュキッチは、ディナモ・ザグレブでも、またとりわけジェコが不動のセンターフォワードであったヴォルフスブルクにおいても、マクラーレン監督の采配により左サイドで威力を発揮していた。
強固な意志と決断力を持ち献身的な彼は、サイドで疲れを知らぬ動きを見せ、決して守備を厭わない。ときに最後尾まで下がってアレックス・サンドロのカバーをする。
自身のゴールは特に多くはないが、チームメイトに効果的なパスを供給する(今季は8ゴール4アシスト)。また必要に応じて中央でもプレーし、相手ディフェンダーの圧力に耐えられるだけのフィジカルの強さとモビリティも持ち合わせている。コレクティブなユニットの中で中心的な役割を担っているのだった。