プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
オカダvs.柴田が新日本に残したもの。
勝者なきIWGP。桜の季節の記憶。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2017/04/11 17:00
全身全霊をかけて戦ったオカダと柴田。果たしてこの試合に本当の勝者がいたのか否か……。
どうやったらレインメーカーを封じることができるか?
IWGPという新日本プロレスの象徴が目の前にあった。
前回このタイトルに挑んだのは13年も前のことだ。ガツガツした当時の王者は頑強な藤田和之だった。ぶっ倒されたけれど、楽しい戦いだった。でも、今はもっと楽しい。
不思議なくらいの楽しさと緊張感に柴田は震えを隠せなかった。
どうやって、戦うか? どうやったら、オカダのレインメーカーを封じることができるかがポイントだった。
オカダに負けない根性があっても、肉体的には長期戦が不利なのはわかっていた。でも、どちらから誘ったのか、試合の流れは互いをとことん痛めつけ消耗させる我慢比べのような方向に向かっていた。
左腕も巻き込んだ、長い長い卍固め。
ドロップキックを先に放ったのは柴田だった。
柴田にダメージを与えたのもオカダのドロップキックだった。オカダが繰り出す低空ドロップキックは重みを増した感がある。
要所要所でドロップキックとキックが流れを変えた。
柴田は、頭突きでダウンを奪うと、仁王立ちになってから卍固めにオカダを捕らえた。そして、逃げられないようにもう一方の左腕も巻き込んだ。
長い卍固めだった。そのまま倒れてグラウンドになっても、柴田はロックを放さなかった。
柴田には秘策があった――。
オカダの手首をとった状態からのキックだった。