プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
オカダvs.柴田が新日本に残したもの。
勝者なきIWGP。桜の季節の記憶。
posted2017/04/11 17:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
試合終了後、血相を変えて道路まで出ていたヤングライオンの岡倫之が救急車を両国の国技館内に誘導した。この救急車で柴田勝頼は都内の病院に運ばれた。新日本プロレスの4月10日の発表によると、柴田は硬膜下血腫が見つかり、手術を受けたという。
こんなオカダを見るのは初めてだった……。
オカダ・カズチカと柴田のIWGPヘビー級戦は、満開の桜が雨で少し散り始めた満員札止めの国技館で4月9日・日曜日に行われた。
柴田は大歓声を受けて青コーナーから静かにリングに入った。
オカダがステップを上がってリングのエプロンに立つと、ロープをくぐる前に客席に向かって雄叫びを上げた。こんなオカダを見るのは初めてだった。何がオカダにこんなパフォーマンスをさせたのだろうか?
オカダはコーナーに上がると国技館には盛大なカネの雨が降ったが、声援は柴田の方が大きかった。
ど派手なチャンピオンと地味で孤独なチャレンジャー。
絶対王者の風格さえ出てきたオカダだが、柴田への熱い声援は判官びいきというよりは、感情移入ができる、できないの差なのかもしれない。
連日の前哨戦ではぶっきら棒で無鉄砲な攻めに固執してきた2人だったが、立ち上がりは懐古的でオーソドックスなヘッドロックなどの攻防になった。
そのファイト・スタイルの代償で身体はボロボロに。
オカダ29歳。
柴田37歳。
柴田の肉体は身を削ってきたファイト・スタイルの代償でボロボロだ。
いつリングに立てなくなっても不思議ではないくらいボロボロだ、といっても本人は否定しない。これは、今回の救急車の一件がなくても、柴田がそのスタイルを貫いてきた証でもある。
柴田は肩のテーピングも外して、素のままでこの特別な戦いに挑んだ。