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日本柔道の改革、今度は代表選考。
4月の全日本が“対象外”の試合に?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2017/03/21 07:00
中村美里は唯一、同年の世界選手権とグランドスラム東京を2度制している。
同一年に両大会を制覇したのは、すべて実力者。
選考対象大会である以上、いくつもの大会に照準を合わせざるを得ず、消耗していく。それを避けられるという点で、いち早く内定を得られる基準ができたことは、選手にとってはメリットになる。何よりも、腰を据えて、世界選手権を目指せることはプラスになるだろう。
そして新基準のハードル自体、決して低くはないものになっている。
前身の嘉納治五郎杯国際柔道大会から柔道グランドスラム東京に改称された2009年以降を見ると、同じ年に世界選手権とグランドスラム東京を制した選手は、10名(11回)しかいない。
○2009年:福見友子(48kg級)、中村美里(52kg級)、上野順恵(63kg級)
○2010年:穴井隆将(100kg級)、西田優香(52kg級)、松本薫(57kg級)
○2011年:浅見八瑠奈(48kg級)
○2013年:高藤直寿(60kg級)
○2014年:近藤亜美(48kg級)
○2015年:羽賀龍之介(100kg級)、中村美里(52kg級)
いずれも名だたる実力者たちだ。両大会優勝者の人数からしても、2つの大会を制するのは決して簡単ではないことが分かる。
ただ、明確な目標ができたことは励みにもなる。両大会を勝って内定を決めたいという意識が向上を促すことも考えられる。
東京五輪までこの選考でいくのか、別の方法を取るか。
もし、ハードルを越えて次々に代表内定者が出れば、これまで最終の代表選考対象大会であったことで関心を集めた全日本選抜体重別などへの関心が薄れるということも考えられなくはないが、それはまた別問題だ。
今回の制度は、まずは2018、2019年の世界選手権を対象に導入され、東京五輪への選考時に、そのまま継続するのか、別の方法をとるのかなど、あらためて検討される。
その成否は、世界選手権で選手たちが残す成績にもかかってくる。