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Bリーグ大河正明チェアマンが語る。
NBAのアリーナ、ビジネス、地元愛。
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byKiyoshi Mio
posted2017/03/10 11:00
銀行員から転身し、Jリーグ理事を務めた大河正明氏。一足先にバスケット界入りしていた川淵氏に請われてBリーグの初代チェアマンに就任した。
「競技者だけのためでなく、見る人のための施設を」
──人脈作りという話が今ありましたけれど、アダム・シルバーNBAコミッショナーとはお会いになりましたか?
「会えていないです。今回はお会いできないのかなと思います」
──外から見ての印象として、アダム・シルバーはどういうコミッショナーだと感じますか? プロリーグのトップとして、真似したいことはありますか?
「アメリカ4大スポーツと言われていますけれど、その中でもNBAは、世界中にワールドワイドに広がっているリーグ。そういったところの強力なリーダーシップっていうのが、4大スポーツの中ではNBAが少し抜きんでた存在です。何よりも、お客さんをたくさん入れて、コンテンツ力を高めて、そして商売していくんだ、という強い意思を感じます。(リーグを)1つの方向にぶれないで導いていくっていうことが、こちらのコミッショナーを見ていると大切なんだなと」
──NBAとBリーグは、今はレベルも規模も比較にならないほど違うわけですけれど、それでもNBAから学べることというのはありますよね?
「うん、夢は大きく持っていないといけないですし。
まずやっぱり、アリーナがあまりに違いすぎる。日本は体育館で、皆さん苦労してアリーナのような雰囲気を出してやってはいるんだけれど、入るキャパシティも、NBAは2万近く入るのに対して、日本だと5000人規模のアリーナ(を用意してほしい)と言ったら、みんなが目を白黒させちゃうような状況です。僕らのコンテンツを見てもらうためのそういったアリーナ、観戦環境っていうのは、一番大きな差だと思いますね。
僕は元々サッカーの世界にもいたし、ヨーロッパのサッカーなどを見ても、日本ではこれから競技者のためでなく、見る人のための施設ができていくような、アリーナ革命というのかな、そういったものを起こしていかないとだめだと思います」
──アリーナは、キャパシティ以外に何が一番違うと感じますか?
「アリーナは半日、1日過ごしても飽きない楽しさがある。日本では、物販をするにしても飲食をするにしても、試合が開催できるところは本当に限られていて、観客席でたとえばビールが飲めないとか、そんな体育館はいっぱいありますよね。場合によってはスリッパに履き替えさせられるような。規模をいきなり2万人というのは無理にしても、そういうスペックを揃えていきたい。
たとえば日本って、4面バスケットコートが取れるのを国体仕様と言うと、4面を長細く作っちゃう。ゴールの後ろ側っていうのは、チケットを売るような席じゃなくなっている。なるべく、正方形に近い長方形にしてほしいというようなことを、新しくできるアリーナについては、行政やクラブに言っています。
アメリカは当然、コーナーの席は斜めに、真ん中を向いて見られるようにできているのだけれど、日本の場合は本当に真四角にできていて、端っこに座っちゃうと身体を捻らないと見えなかったり。観客収容が1万人でも7000人でも、まずはそういったところの発想を変えていくことが大切だと思いましたね」
──プレーする人だけの事情で作られていたのを、見る人のためのアリーナに変えるということですね。
「うん。あとやっぱりアリーナは、ある意味で社交場ですよね。今回も、こういったオールスターを中心に、いろんなバスケット関係者だとか、バスケットと関わっている企業の方が集まって、いろんなところで商談をしている。VIPルームだとか、VIPラウンジだとかっていうのは、そういうことを含めて使えるものだと思う。日本でも、作る以上はそういうような社交場になるようなVIPルームのようなものは必須として作っていきたいなぁと」