プロ野球亭日乗BACK NUMBER
侍ジャパンの野球とは何か――。
指揮官の「遠慮」はチームを殺す。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2017/03/06 12:30
侍ジャパン、壮行試合前の練習風景。左から稲葉篤紀打撃コーチ、小久保裕紀監督、奈良原浩ヘッドコーチ。
試合前練習で、ほとんどバント練習をしていなかった!?
もうひとつ気になることがあったのは、投手陣を中心にした4日の自主練習でのことだった。そこにあるべき名前がなかったことが気になったのである。
前日の3日の阪神との強化試合で、小久保采配が“批判”にさらされた場面があった。
3点を追う6回表無死一塁。ここでベンチは9番の小林誠司(巨人)をそのまま打席に立たせて、送りバントのサインを出したが、その小林が送れずに見逃し三振に倒れ、チャンスをものにできなかった。
「なぜ攻めない? なぜ代打を送らない?」
1つの黒星が予選敗退につながる試合では、積極的に代打を送って試合を動かす場面ではないか、という批評が目立ったが、戦術としては決して間違いではないと思う。
問題は送れなかった小林であり、さらに言えば、ならばなぜ練習をしないのか、させないのかということだ。
台湾プロ野球代表との壮行試合を行ったヤフオクドームの一塁ベンチ前には、バント練習用のマシンが据えられていた。ところが台湾戦2試合の試合前にここでバント練習を行ったのは、田中広輔(広島)らほんの2、3人で小林の姿はなかった。
もし首脳陣が選手に遠慮して練習させていないなら……。
このチームはそれぞれがチームで主力を担うスター集団で、基本的には練習も各々の自主性に任せている。
ただ、代表の試合は普段とは違う。
場合によっては所属チームでクリーンアップを打つ選手でもバントのサインが出る可能性がある。ならばその準備はすべきだし、首脳陣はさせるべきなのである。
試合前の練習時間は短く、特に捕手はやることも多いのでバント練習まで手が回らないかもしれない。それなら4日の自主練習で感覚をもう一度磨くべきだし、コーチの誰かが、「ちょっと転がしに行こうか」と声をかけるべきではないか。
もし首脳陣が選手に遠慮して練習をさせられないのならば、そこは本戦で大きな落とし穴になりかねない。