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「もう猫じゃないわ。虎よ」で世界一。
小平奈緒の滑りはメンタルから進化。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO
posted2017/03/06 07:00
五輪を1年後に控えての絶好調。それでも小平は「熟すのはまだ先」とさらなる成長を見据えている。
「もう猫じゃないわ。虎よ。頂点を楽しむのよ」
ここぞというところで、爆発的な滑りをする力も見せた。
平昌五輪のプレ大会となった2月の世界距離別選手権では、五輪2連覇中の地元韓国の星、李相花を抑えて優勝した。1000mでも2位になった。その2週間後にカナダ・カルガリーで開催された世界スプリント選手権では総合ポイントの世界新記録を樹立し、日本人として黒岩彰以来30年ぶりとなる優勝を飾った。
オランダに渡ったばかりのころ、小平に「怒った猫になりなさい」と指導したティメルコーチはSNSを通じて世界スプリント優勝を称え、「もう猫じゃないわ。虎よ。頂点を楽しむのよ」とメッセージを送った。勝ち続ける自分に負けない、勝者のメンタリティーを感じ取ったのだろう。
結城コーチも、「メンタルは逞しくなった。以前とは全然違う。落ち着きがあり、すべてにおいて、何があっても大丈夫だと思えている」と成長に目を細めている。
「2年間、金メダリストの視線や雰囲気、振る舞いを身近で感じてこられたことが良かった。今は精神面で土台がしっかりし、自分の中に幹があると感じている。どこか自信のなかった自分とはお別れできたかな。でも今はまだ通過点ですから」
勝ち続けても飄々としている。目指すのは1年後の頂点である。