プロ野球亭日乗BACK NUMBER
嶋、大野、小林という軸なき捕手陣。
ならばWBCは「3本の矢」しかない。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki/Hideki Sugiyama(2)
posted2017/02/23 11:35
左から小林、嶋、大野……侍ジャパンを支えるキャッチャーたち。日本球界を見渡しても、絶対的に信頼されるような主戦捕手が減っているという現状がある。
3人が3人とも「帯に短し襷に長し」という状況。
昨年の強化試合のオランダ戦ではタイブレークでサヨナラ安打を放つなど、この3人で打撃が最も良いのが大野だが、昨年の日本シリーズで見せたリード面への不安を指摘する声もある。
3人が3人とも「帯に短し襷に長し」なのである。
ただ、1本の矢がそれぞれでは弱いのならば、3本の矢を束ねて強さを生む、という発想もある。
「捕手はその時の投手とのコンビで起用する」
指揮官がこう語っているように、今大会では基本的に捕手は固定せずに、投手によって代えていくパターンになる可能性が高い。
簡単にいえば巨人・菅野智之投手には小林、楽天・則本昂大投手には嶋という具合で、本来ならそこに日本ハム・大谷翔平投手と大野というコンビもあるはずだったわけだ。
要はこれまでは捕手が投手を引っ張ることを重視してきたが、今度はより投手の能力を引き出すことを重視して、気持ちよく投げさせられるバッテリーを組む。そのために普段からコミュニケーションを図っている女房役を優先的に起用するということだ。
なぜ権藤コーチはベンチからもサインを出していたのか?
もちろんだからといって投手任せで、ただ球を受けていればいいというわけではない。
11月の強化試合では、実は全てベンチからサインが出ていた。
「強化試合は打たれてもいいんだから、それぞれの投手の色んなものを見たいと思って、あえて私からサインを出した。それともう1つ……」
こう語るのは投手陣を預かる権藤博コーチだ。