オリンピックPRESSBACK NUMBER
ケンブリッジ飛鳥が語る「プロと夢」。
2017年中にまず9秒台、そして……。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byNIKE JAPAN
posted2017/02/23 11:30
リオ五輪での銀メダル獲得を経て、プロ転向へ。ケンブリッジの眼力からは秘めた自信を感じさせた。
僕の場合、ピークを合わせるという感覚は全くない。
――それだけギリギリの戦いだったということですよね。
「もう少し速く走れた気がするんです。だから悔しい……。でも、改めて考えると、オリンピックの舞台で、一瞬でも金メダルを意識できたこと自体、本当にすごいことだと思うんです。リレーの決勝で、アンカーで、バトンをもらった瞬間、すぐ隣にボルト選手がいる。前には誰もいない」
――聞いているだけで鳥肌が(笑)。
「いやあ、本当に。今振り返っても、すごい経験をさせてもらったと思います」
――それにしても、100メートルはわずか10秒の一発勝負。その瞬間にコンディションのピークを合わせる作業は、本当に難しいのではないかと思うのですが。
「他の選手のことは分からないんですが、僕の場合、ピークを合わせるという感覚は全くありません。というより、レースの当日に不安に感じたり、『調子が悪いな』と思ったことがほとんどなくて」
僕、走る時だけはなぜか緊張しないんですよ。
――それって、舞台に関係なく? さすがに、オリンピックの舞台ともなれば少し違うのでは?
「あ……」
――どうしました?
「僕、全く緊張しないんですよ」
――全く?
「ゼロです。実は、今までも大会で緊張したことがなくて。高校のインターハイ、大学のインカレ、日本選手権、五輪もそうなんですけど」
――それって、アスリートとしては大きな強みですよね?
「そう思います」
――ちなみに、例えば「明日300人の前で講演を」と頼まれたら?
「それはダメです(笑)。そういうのは全く別モノで、なぜか走る時だけは緊張しないんです。気持ちは高ぶっているんですけど、楽しさが勝るのか、『ダメだったらどうしよう』と考えたことがなくて。だから、試合のほうがなぜかラクなんですよ」