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昨年はCS、今年は「日本一」――。
DeNA田中健二朗、見えつつある頂点。
 

text by

日比野恭三

日比野恭三Kyozo Hibino

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2017/02/02 07:00

昨年はCS、今年は「日本一」――。DeNA田中健二朗、見えつつある頂点。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

かつての甲子園優勝投手である田中。左のセットアッパーの地位を確立した27歳にとって試金石のシーズンが始まろうとしている。

田中にとって欠かせない木塚投手コーチという存在。

 ずっと調子がよかったわけではない。託されたマウンドでアウト1つとれずに降板した試合の後、「何もできずに終わりました」と言葉少なに帰っていったこともあった。それでも、そのすべてをひっくるめて「めちゃくちゃ楽しかった」と田中は言うのだ。

「うまくいくことばっかりじゃなくて、難しいなって考えたり、それをシーズン中に試合で投げながら克服できたり。そういうことができたので、すごく楽しかった。もっとこうしてればよかったなって、あとから思うじゃないですか。それを次の対戦で実践したり、あとはサインに首を振って自分の意見を押し通してみたりとか。これまではサインどおりにって感じもありましたから」

 田中の支えとなっているのは、ブルペンを担当する木塚敦志投手コーチだ。

 2人の経歴を重ねてみれば、田中のプロ1年目、2008年のファーム時代から接点が見いだせる。前年に球団史上最多76試合に登板していた木塚は、その反動もあってか肩を痛め、5月以降を二軍で過ごしている。そして田中が一軍初登板を果たした2010年のシーズンを最後に、木塚は引退。その後はコーチと選手という間柄で、多くの言葉を交わしてきた。

「自分のいい時も悪い時も知っている木塚さん」

 昨シーズン、活躍を続けている要因を聞いた時、田中が必ずといっていいほど口にした言葉がある。

「もっとこうしとけ、ああしとけって言ってくれるので……」

 ブルペンの様子は外からは見えないが、田中のかたわらにはいつも「自分のいい時も悪い時も知っている木塚さん」がいることを暗示する言葉だった。

 シーズンを終えても、信頼に揺らぎはない。

「(60試合以上も投げられたのは)いちばんは木塚さんがいろいろ、こうしとけ、ああしとけ、と言ってくれたこと。ちょっと波が起きてきた時にも、それを持ち直させるような基本にかえった練習を付き合ってやってくれた。そういうことを、1年間通してやれたっていうのが大きいのかなと思います」

 行ったことのなかった場所に初めて行った経験を経て、2017年はさらにその向こう側に目標を見据える。

「1つしかないですよ。日本一です」

【次ページ】 「2017年は優勝という意識を常にもちながら戦いたい」

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