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羽生結弦不在の全日本の舞台裏。
宇野昌磨、無良崇人らは何と戦った?
posted2017/01/10 11:30
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Asami Enomoto
宇野昌磨の初優勝で幕を閉じた第85回全日本選手権。
4連覇中の羽生結弦がインフルエンザのため欠場することが直前に決定し、絶対王者が不在の同大会を誰が制するのか注目が集まった。
しかも、誰が勝っても初優勝。
グランプリシリーズで表彰台を経験している宇野、無良崇人、田中刑事ら実績のある3選手を中心に展開していくと予想された。
「ユヅがいない全日本(選手権)はめずらしいと思いますが、そういった状況の中で自分たちがトップとして戦う、自分たちが全日本選手権を作り上げていかなければならないという気持ちのなかで、フリーで自分自身をうまく表現できなかったということですごく悔しい。そういった意味では、これまで出場した全日本選手権の中でも、一番悔しい大会になったという思いが強いですね」(無良)
25歳の無良は、ショートプログラムで冒頭に4回転トーループを着氷させると、一気に波に乗り、力強いスケーティングで'15年大会に迫る90.34点をマーク。
「ユヅがいない中でどれだけ自分の存在感を強くアピールできるか。表現者としてはそれが達成できたショートプログラムだった」
演技後、納得の表情を見せた無良は、ここ最近では一番いい出来だったと手応えを感じ、宇野を抑え首位に立っていた。
しかし、フリーでは一転。ジャンプにミスが出て、厳しい表情でミックスゾーンに現れ、冒頭の発言へとつながった。
「いつもいるべき存在がいないのは、すごく不思議な感覚だった」と苦笑いを浮かべた。
羽生と同学年の田中刑事の感想。
羽生と同学年で幼い頃から切磋琢磨し、今季のNHK杯でグランプリシリーズ初の3位入り、全日本で初の2位に輝いた田中刑事。
「結弦がいない全日本は不思議な感じ」
絶対王者の不在に多少違和感を覚えると同時に、あらためてその存在の大きさを感じていたようだ。