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羽生結弦不在の全日本の舞台裏。
宇野昌磨、無良崇人らは何と戦った?
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byAsami Enomoto
posted2017/01/10 11:30
今年3~4月にフィンランドのヘルシンキで開催される世界選手権の代表をほぼ手中にした宇野。20歳となる2017年に、さらなる飛躍を誓う。
羽生不在のプレッシャーが宇野に与えた独特の影響。
宇野は、フリーでも演技前半にジャンプでミスが相次いだが、後半の単発ジャンプをコンビネーションにするなど、グランプリファイナル以降、必死に取り組んできた課題を克服した。
「練習は絶対に無駄にならない。それが確認できてうれしい。久々に頑張りが報われた」と、失いかけた自信を取り戻した。それが演技後、リンク中央で見せたあの“涙”の理由だった。
‘14年、'15年と過去2大会は羽生の壁に阻まれ、2年連続2位だった。
今大会は羽生不在とはいえ、初の全日本タイトルを獲得。羽生不在のプレッシャーは、「今までずっと追い続けてきたのに急に追われる立場になって、なかなかコントロールできなかったのだと思います。でも、これも経験」(樋口美穂子コーチ)と本人も無意識のうちに感じていたのかもしれない。
加えて、グランプリシリーズや世界選手権とは異なる、日本一を決定する独特の雰囲気も漂う。宇野だけではなく、選手たちの精神面に大きな影響を与えただろう。
世界選手権、平昌五輪でも間違いなく優勝候補の羽生。
日本一を争う選手たちの中で、欠場した羽生はこの大会をどんな思いで見ていただろうか。
NHK杯では3度目の300点超えを記録し、GPファイナル4連覇中と、誰もが認めるその実力は揺るぎようがない。今季の世界選手権、そして'18年平昌五輪でも間違いなく優勝候補筆頭に挙げられることになる。
平昌五輪代表選手を決めるのは今年末の全日本選手権などが重要となる。果たして、羽生の壁を超える選手は出てくるだろうか――少し気が早いが11カ月後の戦いを楽しみにしたい。