猛牛のささやきBACK NUMBER
安達了一「引退まで覚悟していた」
オリ遊撃手は難病といかに戦ったか。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2016/12/20 07:00
今宮健太、中島卓也、鈴木大地らパ・リーグのショートは超ハイレベル。そして安達了一も、その一角を形成している。
「引退覚悟というか、それぐらいに考えていたので」
テニスの世界ランキング2位、ノバク・ジョコビッチの著書にならって毎日マヌカハニーを口にするようにしたり、R-1ヨーグルトを食べたりと、体調回復によさそうなものは何でも試した。
終わってみれば118試合に出場。139試合出場の昨年に比べれば少ないが、自己最高の打率.273を残した。
現在は通院の必要もなく、漢方の薬だけで体調を維持できている。
入院中や、復帰したばかりの頃は、これほどの回復や活躍は安達自身、予想できなかったと言う。
「野球ができるかどうかもわからなかったので。もう、引退覚悟というか、それぐらいに考えていたので、ここまでできるとは思っていませんでした」
ここまでやれた要因を聞かれ、「ストレスがなかったから、というのはある」と答えた。
家族はもちろん、チームメイトやスタッフの理解やサポートがあればこそだ。そして安達の内面を支えていたのは、同じ病気の人たちからの励ましの言葉や、そうした人々に勇気を与えたいという思いだった。
「同じ病気の人がたくさんいて、そういう人たちも頑張っている。自分はテレビなどで見られる立場なので、自分が頑張っている姿を見せることで、他の人たちも頑張ってもらえればと思ってプレーしていました。だから、つらい顔をしないように、というのは心がけていました。テレビに抜かれるかもしれないから。そういう顔を見られて、同じ病気の人に『つらいんかな』と思われたくなかったので」
試合に出るつもりでグラウンドには現れるが……。
グラウンドで気を張っている分、グラウンドの外では疲労困憊の様子を隠しきれないこともあった。一番苦しそうだったのは8月下旬。復帰後初めて4試合続けて欠場した。試合前の練習ではグラウンドに現れるが、練習が終わるとぐったりとした表情でロッカールームに引き上げた。
「毎日試合に出るつもりで来てるんですけど、体を動かすとだるくなる」ともらした。
今年はキャンプに参加できなかったため、体に夏場を乗り切るだけの蓄えがなかったのかもしれない。