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安達了一「引退まで覚悟していた」
オリ遊撃手は難病といかに戦ったか。

posted2016/12/20 07:00

 
安達了一「引退まで覚悟していた」オリ遊撃手は難病といかに戦ったか。<Number Web> photograph by Kyodo News

今宮健太、中島卓也、鈴木大地らパ・リーグのショートは超ハイレベル。そして安達了一も、その一角を形成している。

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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Kyodo News

「出れるっていう自信しかないですね」

 来年、全143試合に出場できるという手応えは? と聞かれた安達了一は、いつものように淡々と、しかしキッパリと言い切った。

 12月7日、契約更改を終えた安達は、シーズン中の疲れが癒えたスッキリとした表情で、記者会見に臨んでいた。

 潰瘍性大腸炎という難病を抱えながらの今シーズンを、噛みしめるようにこう語った。

「振り返りたくないシーズンでした。でも、経験できないようなシーズンだったので、苦しかったですけど、なんとかできてよかったなと思います」

 現在の体調についての質問にはことごとく、「もう全然、大丈夫です」と食い気味に答えた。

20日の入院生活で体重が10キロ落ちた。

 体の不調を感じ始めたのは約1年前。今年1月に潰瘍性大腸炎と診断され、入院を余儀なくされた。春季キャンプには参加できず、20日間の入院生活で体重は約10キロ落ちた。

 それでも2月中旬から練習を再開し、二軍の練習に合流。4月2日のウエスタン・リーグで実戦復帰を果たすと、4月12日に一軍登録。チームは開幕につまずいて最下位にあえいでいたこともあり、急ピッチでの一軍復帰だった。

 今季はナイターの翌日のデーゲームは休ませるなど、慎重に体調に気を配りながらの起用だった。毎朝、安達は自身の体の声を聞き、出場が難しいと判断した日は「今日は無理そうです」と福良淳一監督に連絡を入れた。監督も毎朝、気をもみながらシーズンを過ごしていたという。

 復帰後まもない4、5月はペースをつかむのに苦労したが、慣れるとともに安達は調子を上げた。特に7月はリーグトップの打率.380を記録し、安打数もリーグ最多の30安打。プロ5年目で初めての月間MVPに輝いた。

【次ページ】 「引退覚悟というか、それぐらいに考えていたので」

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