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安達了一「引退まで覚悟していた」
オリ遊撃手は難病といかに戦ったか。 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byKyodo News

posted2016/12/20 07:00

安達了一「引退まで覚悟していた」オリ遊撃手は難病といかに戦ったか。<Number Web> photograph by Kyodo News

今宮健太、中島卓也、鈴木大地らパ・リーグのショートは超ハイレベル。そして安達了一も、その一角を形成している。

同じ病気の人に心配をかけないために出続ける。

 傍目には、無理せずしばらく休んだほうがいいのではと思えたが、安達はこう言った。

「やっぱり、同じ病気の人も見てるから。(休むと)『あ、今日出てない。どうしたんだろう?』って心配かけてしまうと思うんで。そういう人に勇気を与えなきゃいけないから」

 その思いだけで安達は踏ん張った。9月になると調子を取り戻し、顔や首に出ていた吹き出物もいつのまにかきれいに消えていた。シーズン終わりが見えた9月28日には、4点ビハインドを追いつく同点打を放ち、同級生のT-岡田とともにお立ち台に立った。

「いい試合だったけど、もっと早くこういう試合ができていれば」と、喜びよりも悔しさがにじんだ。

「今年はやるぞ、という時に病気になってしまって、出遅れてしまった。チームがこういう順位にいるのも、自分が最初からいなかったからだというふうにちょっと思っているので、来年は、なんとか万全でやりたいですね」

来季は、抜けた糸井の分まで走る。

 来シーズン、やりたいこととして安達が真っ先に挙げたのは、今年6個に終わった盗塁だ。

「今年は全然盗塁ができなかった。足に力が入らなくて、走っても全然前に進まない感覚でした。たぶん練習できていなかったからだと思うんですが。今はだいぶ戻っている。来年は30盗塁はしたいですね。(糸井)嘉男さんもいなくなったので、嘉男さんの分も、という思いでやっていきたいと思います」

 11月の秋季キャンプには参加せず、神戸に残って練習した。外食が続くのはまだ怖さがあり、安達の体のことをもっとも理解してくれている妻の食事が一番安心できるからだ。12月、1月の自主トレも神戸で行う。

 それでも、食生活も徐々に元に戻りつつある。発病以降、生ものや辛いものはいっさい食べないようにしていたが、シーズン後の納会で初めて刺身を口にした。

「うまかったすね。生ものが好物だけど、ずっと我慢してたので」と無邪気に笑った。

 野球ができること。好きなものを食べられること。以前は「当たり前」だったいろいろなことへの感謝を噛みしめながら過ごした1年だった。苦しかったこの年を踏み台にして、29歳になる来シーズンは、全143試合でチームを支える存在になることを心に誓っている。

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