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工藤壮人はMLSで代表返り咲きへ。
あごを骨折してもダイビングヘッド。
posted2016/12/20 11:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
AFLO
カナダからの手紙ならぬ、カナダからのアピール。
海外から日本代表を目指すのは、何も欧州の舞台に限られてはいない。柏レイソルのエースを務めてきた工藤壮人は今季、バンクーバー・ホワイトキャップスに移籍し、人気沸騰中のMLS(メジャーリーグサッカー)に活躍の場を移した。
「MLSが盛り上がっていると聞いていましたし、今までにあまりない路線で勝負したいという気持ちがありました。初めての大きなケガもあったし、自分のなかではサッカー選手としても人としても色々吸収して、成長できた1年でしたね」
プレーオフにあたるMLSカップに進めず、ひと足早いシーズンオフで日本に帰国したものの、彼はそう言って充実した表情をこちらに向けた。
190cmのDF相手にポイントで決める感覚。
カップ戦を含め、ゴールは3得点にとどまった。
「結果」は得られなかったかもしれないが、「成果」はしっかりと手にしていた。ハードワーク、チームワークは味方からもファンからも支持され、監督からの信頼も勝ち取っている。一番の成果は、ゴールを奪うための新しい感覚を得たということだ。
「ディフェンダーは190cm以上の大きな選手がチームに大体1人はいて、フィジカルが強いので、自分としてはポイントで勝負しなければならない。ペナルティーエリアで、どれだけ“最短”で決められるか。
クロスやスルーパスに対して相手とのフィジカルコンタクトのなかで、相手よりも一歩前に出て触って決める、点に合わせるという部分は練習から研ぎ澄ますことができたかなって思います。試合の結果は出なかったけど、1年やってきて自分のなかでは高められたなという実感を持つことができました」
リーグ戦初ゴールは、26歳になった誕生日翌日の5月7日、ホームでのポートランド・ティンバース戦だった。今季4度目の先発。0-1とリードされて迎えた後半15分、味方のパスが相手の足に当たってこぼれたボールに対してペナルティーエリア内に侵入し、左の角度のない場所から左足を振り抜いてニアに突き刺した。