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工藤壮人はMLSで代表返り咲きへ。
あごを骨折してもダイビングヘッド。 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byAFLO

posted2016/12/20 11:00

工藤壮人はMLSで代表返り咲きへ。あごを骨折してもダイビングヘッド。<Number Web> photograph by AFLO

あごの骨折を経験した工藤壮人の口からはマウスピースが覗いている。それでも、勝利のためならば彼は躊躇わずに飛び込んでいく。

復帰2戦目に、頭から飛び込んでゴールを決める心胆。

 妻の支えと懸命のリハビリの甲斐もあって、大ケガからわずか1カ月半後に練習に復帰する。再発防止にマウスピースを使用するようになった工藤は、7月13日のホーム、レアル・ソルトレイク戦で復帰すると、中2日のホーム、オーランド・シティ戦でも先発。前半43分、右サイドからのFKをファーで待ち受けてダイビングヘッドで合わせた。

 あごを骨折した選手が、復帰して間もない試合で頭から飛び込んでいく。

 恐怖心があったのではないかと尋ねると、工藤は笑顔をつくってこう答えた。

「いや、なかったですよ。衝突した痛い記憶があれば別でしょうけど、記憶は飛んでいましたから。それよりもどうしても決めたかった理由もあったんです」

ビジャ、ピルロ、ジェラードらと競いながら。

 工藤が口にしたのは、ケガで長期離脱に入っていたガンビア出身の快足ウインガー、ケクタ・マネーの存在だった。21歳のマネーは欧州からも熱視線を浴びている有望株。工藤にとって入団当初から何かと気にかけてくれたチームメイトの1人で、ウマも合った。ケガで離脱した悔しさを先に味わっていただけに、試合前日には「お前のために、点を取るよ」と約束していたという。

 マネーに誓った有言実行のゴール。

 本人が見守るスタンドに向かい、手でマネーの背番号「23」をつくってからガッツポーズを送った。ケガを乗り越えた自分を、どうしても示したかった。それは、ケガの同僚を勇気づけるとともに、妻に対する感謝、ケガを克服した自分に捧げる意味も含まれていたように思えてならない。

 ダビド・ビジャ、アンドレア・ピルロ、スティーブン・ジェラード、フランク・ランパード、アシュリー・コールらビッグネームが集まってきたMLSで揉まれ、工藤は心身ともに成長できたと自覚している。

【次ページ】 日本代表のことは、いつも工藤の頭にある。

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