マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
日本一地味な1億円プロ野球選手!?
谷元圭介は、167cmから投げ下ろす。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/12/16 11:30
日本シリーズでは胴上げ投手にもなった谷元圭介。彼のような選手を大切にするのも、日本ハムの強さの1つだ。
学生野球で終わる選手と決めつけていたが……。
そうはいっても、130キロ後半だろ……?
そうはいっても、165センチ(当時)だろ……?
いずれ学生野球で終わる“小さな大投手”だと決めつけていた。考えの浅さを思い知らされたのは、谷元圭介社会人1年目の秋だ。
新潟のバイタルネットという社会人チームで早くもエースになっていた彼が、日本選手権の京セラドームのマウンドに立っていた。
強敵・富士重工を向こうにまわして、5回を過ぎても無失点に抑える快投が続く。走者を許してから、なかなか点を与えないピッチングが学生当時のままだった。
アレッと思った。富士重工の強打線が谷元圭介の球威に力負けしている。
京セラドームのダグアウトの横には、グラウンドレベルで試合が見られる“小窓”がある。試合のあとの囲み取材にはちょっと早かったが降りていって、7回が始まるところから小窓にかじりついた。
165センチの投手が投げるボールに、角度が見えた。
打者と同じ高さで、谷元圭介の球筋を見て驚いた。
なんだ、あの角度……。
165センチの投手のボールに、はっきり“角度”が見えた。
野手よりも小柄な右のオーバーハンド。なのに変化球は、たまにカーブと、チェンジアップのような抜いたボールを投げるだけ。ほとんどが真上から投げ下ろす速球で、富士重工の打者たちがその速球の高さを見間違えている。
打者がボールの高さをつかめない。それが“角度”が効いている何よりの証拠だ。
翌年2008年、バイタルネット・谷元圭介は最初の「ドラフトイヤー」を迎えた。さまざまな発表の場で、その年の隠し玉を問われるたびに、私は彼の名を挙げ、そのたびに「165センチですか……」という反応をいただいていた。