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なぜ日本マラソン界はダメになった?
「福岡国際マラソン」からの再出発。
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph byNanae Suzuki
posted2016/12/02 08:00
新しく、長距離・マラソン強化戦略プロジェクトのリーダーに就任した瀬古利彦氏に期待がかかる。
瀬古「今の選手は練習量が足らない」
東京五輪へ向けた選考レースのあり方への提案や、ナショナルチームとしての強化方針などはこれからミーティングを重ねて決定していくことになるが、プロジェクトリーダーに就任した瀬古氏は日本マラソン界の現状について、「今の選手は練習量が足らない」という指摘をしている。
最近出版された『日本のマラソンはなぜダメになったのか』(文藝春秋)でも瀬古氏はこう力説している。
「各大学の箱根駅伝の練習を見れば、練習量が少ないわけではなくけっこうやっています。30kmまではいかなくても、20kmまでは1km3分で押していく練習をしている。だったらあと20km伸ばせばいいだけの話ですが、そうなるとなぜか練習量が多いと言われ始めるのが不思議です。
要は多くの選手が、マラソンをやるという覚悟を決めていないのでしょう。
マラソンをやるのだったら覚悟を決めてマラソン練習をすればいいのに、指導者も『ケガをされたら困る』と気を使ってしまっている。本気でマラソンをやろうと思うなら、24時間マラソンのことを考え、日常生活の中でも何をすべきかを考えなければいけない」
瀬古氏は「この人の練習量はすごい!」と誰もが思うような選手に記録を出るはずだ、それくらいしないと日本のマラソン界はダメになってしまう、と語っているのだ。
ランナーの能力は上がっているはずだが記録は伸びず!?
現実に個々の選手たちの走力・スピードを見れば、基礎力は以前より上がってきているのは確かである。
それなのにマラソンの記録が停滞しているのはなぜなのか――。
新しい強化戦略プロジェクトのリーダーたちに求められるのは、マラソンに対する選手や指導者の意識変革なのだろう。
その変革がいかに円滑に出来るかどうかが、東京五輪の結果に直結している、とも言える。